かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
ブログランキング・にほんブログ村へ

ほん

『民族とネイション』(塩川伸明)、『民族という名の宗教』(なだいなだ)

民族とネイション: ナショナリズムという難問 (岩波新書) 作者:塩川 伸明 岩波書店 Amazon 民族という名の宗教: 人をまとめる原理・排除する原理 (岩波新書) 作者:なだ いなだ 岩波書店 Amazon 前者は再読ですが、旧ソ連地域を専門とする研究者がナショナリ…

煙害に立ち向かった善人たちの物語/『ある町の高い煙突』(新田次郎)

ある町の高い煙突 (文春文庫) 作者:次郎, 新田 文藝春秋 Amazon 茨城県・日立鉱山の煙害にさまざまな立場から立ち向かった人たちの物語です。特に被害が大きかった村の名家の若き当主と、鉱山会社の社長が実在の人物をモデルとしているということもあってか…

権力と対峙し、自らの権力性に向き合う/『地方メディアの逆襲』(松本創)

地方メディアの逆襲 (ちくま新書) 作者:松本創 筑摩書房 Amazon 元・神戸新聞記者である著者が、秋田魁新報、琉球新報、毎日放送、瀬戸内海放送、京都新聞、東海テレビ放送といった地方メディアのジャーナリストを追いつつ、ローカルだからできる報道・果た…

「宇宙人」を探す時空の旅/『地球外生命』(小林憲正)

地球外生命 アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来 (中公新書) 作者:小林憲正 中央公論新社 Amazon 地球の外に生命はいるのか? 地球の生命史から、火星・木星の衛星エウロパ・土星のエンケラドゥスなど太陽系の天体、そして太陽系外までを旅しながら…

異動しますが仕事は変わりません/『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚)

【目次】 マーケティングの名著を平明に紹介 4月に異動になります、が… マーケティングの名著を平明に紹介 世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた 作者:永井孝尚 KADOKAWA Amazon 書名通りの本で、マーケティング…

ウクライナ侵略の前提にある世界観/『「帝国」ロシアの地政学』(小泉悠)

【目次】 「内弁慶」的なロシアの二重基準 NATOに加盟させないために「併合しない」 「独自の世界観」に至った道筋は 無力感と「戦後」への展望と 「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略 (東京堂出版) 作者:小泉 悠 PHP研究所 Amazon 「内…

『ネット社会と民主主義』(辻大介編)、『メディア論の名著30』(佐藤卓己)

【目次】 「5ちゃんねる」利用は寛容性を高める 「フィルターバブル」はそんなにない? 「なぜその本を読んだか」は面白い 節穴読書に開き直る 「5ちゃんねる」利用は寛容性を高める ネット社会と民主主義 有斐閣 Amazon インターネット利用と民主主義のあり…

新聞社でCRMを考える/『CRMの基本』(坂本雅志)、『マーケティング・イノベーション』(内山力)

CRMの基本 作者:坂本 雅志 日本実業出版社 Amazon マーケティング・イノベーション 作者:内山力 産業能率大学出版部 Amazon 業務の勉強を兼ねて読んだ2冊です。 前者は、CRMを「顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益の両方を高めるた…

『独ソ戦』(大木毅)と『スターリン』(フレヴニューク)

【目次】 双方グロッキーの大消耗戦 ヒトラーと対照的な少年時代 史料に拠って独裁者の心象風景を描く レーニンから受け継いだ?ナンバー2叩き 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) 作者:大木 毅 岩波書店 Amazon スターリン:独裁者の新たなる伝記 作者:オレー…

蘇我氏・藤原氏から紀伊国造家まで/『古代史講義 氏族編』

蘇我氏・藤原氏から紀伊国造家まで 必ずしも親戚ではなかった物部氏 古代国家の変化と連続性 古代史講義【氏族篇】 (ちくま新書) 筑摩書房 Amazon 蘇我氏・藤原氏から紀伊国造家まで こちらのシリーズの「氏族編」です。 canarykanariiya.hatenadiary.jp 大…

「衰退のはけ口」とか「新しい資本主義」とか/『私は本屋が好きでした』(永江朗)

読書会の二冊目です。 私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏 作者:永江朗 太郎次郎社エディタス Amazon 恥ずかしながら出版流通の仕組みについてはほとんど知らなかったので、その中でいわゆる「ヘイト本」がなぜ書店の一角を…

アイデンティティの複数性/『ある男』(平野啓一郎)

【目次】 アイデンティティの複数性 主人公が「ある男」に惹かれた理由 よく作り込まれたストーリー 友人とのオンライン読書会で扱った本、その一です。 ある男 (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 映画化されるそうですし、筋書きには触れません。 ア…

原敬と「大衆の大正」/『原敬』(清水唯一朗)、『真実の原敬』(伊藤之雄)、『大正史講義』

【目次】 「賊軍」から山県も認める首相へ 多元的体制の基底にあった「大衆」の登場 原敬-「平民宰相」の虚像と実像 (中公新書, 2660) 作者:清水 唯一朗 中央公論新社 Amazon 真実の原敬 維新を超えた宰相 (講談社現代新書) 作者:伊藤之雄 講談社 Amazon 「…

『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治)、『ヒトラー』(芝健介)、『「ナチスの手口」と緊急事態条項』(長谷部恭男・石田勇治)

【目次】 薄氷の軍事的成果 国民的合意と側近の忖度に支えられた政権 「合法的に成立した独裁」は誤り 「むき出しの主権独裁」をどう防ぐか ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書) 作者:石田勇治 講談社 Amazon ヒトラー: 虚像の独裁者 (岩波新書 新赤版 …

選挙の日に読んだ本/『民主主義とは何か』(宇野重規)

民主主義とは何か (講談社現代新書) 作者:宇野重規 講談社 Amazon ギリシアからの民主主義を巡る紆余曲折の歴史を、参加と責任をキーワードに語る本です。 先日行われたような選挙や、それが前提とする議会制はそもそも民主主義と由来を同じくするものではあ…

維新が伸びた理由とまだまだ続きそうな政界再編/『政界再編』(山本健太郎)

【目次】 立憲民主党が減らし、日本維新の会が伸びた理由 政界再編を巡る動きは続きそう 『自公政権とは何か』との併せ読みがオススメ 政界再編 離合集散の30年から何を学ぶか (中公新書) 作者:山本健太郎 中央公論新社 Amazon 他党と選挙協力や合流を重ねる…

方言だけでなく地名も同心円状に分布する/『日本の地名』(鏡味完二)

【目次】 日本の地名 付・日本地名小辞典 (講談社学術文庫) 作者:鏡味 完二 講談社 Amazon 全国分布や地形を検討 日本の地名の語源や起源、地名の伝播や分布の法則などについて、地理や言語(方言)・歴史の知見を使いながら読み解いていく本です。もともと1…

『2050年のジャーナリスト』(下山進)、『教養としてのデータサイエンス』

最近、お勉強で読んだ本など。 2050年のジャーナリスト 2050年のジャーナリスト 作者:下山進 毎日新聞出版(インプレス) Amazon 雑誌連載を再録した本です。 canarykanariiya.hatenadiary.jp こちらの本が非常に興味深く、今回も買い求めました。内容的には…

中東・イスラーム世界は特殊な地域か?/『中東政治入門』(末近浩太)、『イスラーム世界の論じ方』(池内恵)

【目次】 イスラーム教と独裁は関係ある? 公理としての「我々の優位」 いかに折り合いをつけるのか 中東政治入門 (ちくま新書) 作者:末近浩太 筑摩書房 Amazon イスラーム教と独裁は関係ある? 地域研究とサイエンスとしての政治学の双方から、中東政治にア…

「現場の勝手な交渉」を招いた硬直的な国際秩序/『文禄・慶長の役』(中野等)

【目次】 女真族と戦った加藤清正 正確な状況規定を欠いた日本側 現場が勝手に交渉をまとめようとする理由 拉致され、世界各地で売られた朝鮮人奴隷たち 文禄・慶長の役 (戦争の日本史16) 作者:中野 等 吉川弘文館 Amazon タイトル通り、豊臣秀吉の朝鮮出兵…

「ざっくり理解」と「じっくり修正」の両輪/『学びとは何か』(今井むつみ)

【目次】 まずやってみて、修正していく 私の「概説書から読みたい病」 「優れた探究」の両輪 学びとは何か-〈探究人〉になるために (岩波新書) 作者:今井 むつみ 岩波書店 Amazon まずやってみて、修正していく 認知科学の視点から、何かを学んで熟達して…

分断を癒すリベラルの増税論とは/『幸福の増税論』(井手英策)

【目次】 リベラルによる増税論 増税で社会を変える 政治のコンセンサスが大前提 分断を癒すカギは地方に 幸福の増税論――財政はだれのために (岩波新書) 作者:井手 英策 岩波書店 Amazon リベラルによる増税論 非現実的な経済成長の夢を追うのではなく、再分…

結果として補い合って難局を乗り切った島津義久・義弘兄弟/『不屈の両殿』新名一仁

【目次】 「両殿」関係の変遷と御家の存続 対照的な「キャラ」が浮かび上がる 晩年の微笑ましい兄弟仲 足利兄弟に劣らない名コンビ 「不屈の両殿」島津義久・義弘 関ヶ原後も生き抜いた才智と武勇 (角川新書) 作者:新名 一仁 KADOKAWA Amazon 「両殿」関係の…

『英語独習法』(今井むつみ)

英語独習法 (岩波新書) 作者:今井 むつみ 岩波書店 Amazon 認知科学の観点から言語と思考の関係、ことばの発達、学びと教育などについて研究してきた著者が、それらの成果を踏まえた英語学習法を提案する本です。 ポイントは英語のスキーマを習得することで…

『金正恩と金与正』(牧野愛博)

【目次】 大事な妹を「一時避難」させる 3階書記室のエリートたち トップダウン一辺倒では通用しない 金正恩と金与正 (文春新書 1317) 作者:牧野 愛博 文藝春秋 Amazon 大事な妹を「一時避難」させる 最近の情勢のキャッチアップのつもりで読みました。 兄の…

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ヴェーバー)

【目次】 宗教社会学の代表的名著 重要な契機の一つとして 「禁欲」なき後の資本主義 宗教社会学の良書で復習 プロテスタンティズムの 倫理と資本主義の精神 (岩波文庫) 作者:マックス・ヴェーバー,大塚 久雄 岩波書店 Amazon 宗教社会学の代表的名著 カルヴ…

『感染症の日本史』(磯田道史)

感染症の日本史 (文春新書) 作者:磯田 道史 文藝春秋 Amazon 古代から100年前のスペイン風邪まで、日本における感染症の歴史から、新型コロナウイルスが流行する現代への教訓を得ようとする本です。雑誌連載を中心に再構成された本なので、エッセイ風の文章…

『アフターデジタル』『アフターデジタル2』(藤井保文、尾原和啓)など

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 作者:藤井 保文,尾原 和啓 日経BP Amazon アフターデジタル2 UXと自由 作者:藤井 保文 日経BP Amazon デジタルがリアルを包摂する「アフターデジタル」時代のビジネスのあり方について論じた話題書です…

『デジタルエコノミーの罠』(マシュー・ハインドマン)

【目次】 インターネットの理想と現実 サイトの「粘着性」とは 生き残りの前提条件 デジタルエコノミーの罠 作者:マシュー・ハインドマン,山形浩生 NTT出版 Amazon インターネットの理想と現実 インターネットは、その普及当初から想像されてきたほど平等…

『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン)

【目次】 ヒトはデジタル社会向けに進化していない 日々の実践こそ ヒトはデジタル社会向けに進化していない スマホ脳(新潮新書) 作者:アンデシュ・ハンセン 新潮社 Amazon 著名なスウェーデンの精神科医が、スマホの人間の脳や精神状態への影響を紹介した…