かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『民族とネイション』(塩川伸明)、『民族という名の宗教』(なだいなだ)

 

前者は再読ですが、旧ソ連地域を専門とする研究者がナショナリズムを整理した本です。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

ナショナリズムの発生・展開に典型例はない」というところで、豊富な事例をうまくフェーズごとに紹介できている印象です。

後者は、まさに旧ソ連社会主義陣営が崩壊しつつあった時期に、人をまとめる原理としてのナショナリズムや宗教、そして社会主義の役割に共通性を見出しつつ、社会主義の果たした(果たしうる)ことについて考える本でした。

 

奇しくもロシアとウクライナに関する問題と近い議論が展開されていた2冊でした。ロシアでは今回の侵攻を正当化する(フェイクを含めた)情報・論調が広がっており、批判的な意見の多くは封じられ、その結果なのか、ロシア国民の多くが侵攻を支持しているとされているようです。

そのロシア国内の「温度感」はなかなか察知しづらいところではありま須賀、戦況は明らかにロシア側の当初の思惑通りとはなっていない中で、「支持者」たちの認識と実際の戦果のギャップが露呈した時、(まさに一冊目が指摘するように)自ら煽ったナショナリスティックな世論をコントロールできなくなる「魔法使いの弟子」状態に陥ってしまうことはないのか、あるいはそれを理解しているからこそ、一定の戦果を得るまでこの悲惨な戦争を続けるしかないと判断しているのか。いずれにしても、不幸なシナリオです。