認知科学の観点から言語と思考の関係、ことばの発達、学びと教育などについて研究してきた著者が、それらの成果を踏まえた英語学習法を提案する本です。
ポイントは英語のスキーマを習得することです。言語という「氷山」の水面下には非常に複雑で豊かな知識のシステムがあり、人は無意識にそれを参照しながら外界を知覚し、言葉を発しています。その枠組みは言語によって大きく異なっており、日本語のスキーマのまま英語を話したり書いたりしようとすると、一語一対応で直訳する*1ような「間違ってはいないけど不自然な」英語になってしまう、と著者は指摘します。
その上で、辞書やコーパスを用いて語の意味範囲や他の語との関係、用法(構文)を知ることで、語彙を増やしながらアウトプットを重ねていくことを勧めます。一方で、いわゆる多読学習や初学者のスピーキング・リスニング重視には懐疑的で、まずは語彙を増やすことを優先すべきと論じています。
コーパスの使い方や活用法に多くの紙幅が割かれているのは、「実際に試し、学んでほしい」との思いの表れなのでしょう。その分、力点としては押され気味になってしまったようにも見えま須賀、映画を通じた学習法のパートで述べていたこの言葉が、とても印象に残りました。
何かを理解しようと強く願い、真剣に意味を考えることを繰り返すと、それは、自然に記憶に深く刻み込まれ、身体の一部になって、いざというときに、自然と身体が思い出す、「生きた知識」になるのである。
著者については、以前読んだこちらも興味深かったです。
canarykanariiya.hatenadiary.jp
紹介されていた別の本も面白そうなので、読んでみたいと思います。