かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『デジタルエコノミーの罠』(マシュー・ハインドマン)

【目次】

 

インターネットの理想と現実

インターネットは、その普及当初から想像されてきたほど平等・分権的で、「ジャイアントキリング」が頻発する世界ではない。巨額の投資による僅かずつのサイト改善の積み重ねが大きな差として広がり、GAFAのように安定した地位を得るに至った巨人とその他大勢に二極化しているー。そんな身も蓋もない事実を、データを用いながら立論していく本です。

サイトの「粘着性」とは

著者は、サイトがユーザーを引きつけ、長く滞在させ、何度も戻って来させる能力(粘着性)という概念に着目し、Googleが検索などのスピードを少し高めるためにどれだけの投資をしているか、自動レコメンドにおいて規模の大きさがいかに優位か、そしてそうした差がどれだけ広がっていくか、といったことを説明していきます。

その上で、大きなサイトほど地位も安定していること、当初期待された「地方発のインターネットジャーナリズム」が群雄割拠するような状況とは程遠いことなども紹介されます。

生き残りの前提条件

デジタルエコノミーにおける新聞社の立ち回りを考える立場の私にとって、割と救いのない話に終始してはいま須賀、著者の言う「粘着性」を高めるサイトづくりのヒントにも触れており、勉強になりました。読み込みを速くすること、自動レコメンドの充実、コンテンツを増やし更新頻度を高める(短い記事を増やす)、見出しの改善に時間をかける、複数の写真をスライドショーにする、ABテストを積極的に実施する、など。

これらは特段珍しい取り組みではありませんし、やれば救われる免罪符のようなものでは決してありませんが、生き残りの前提条件として、押さえておくべき点だと理解しました。