古代から100年前のスペイン風邪まで、日本における感染症の歴史から、新型コロナウイルスが流行する現代への教訓を得ようとする本です。雑誌連載を中心に再構成された本なので、エッセイ風の文章になっています。
著者もわかっているはずで須賀、歴史上の一見類似した事象をどこまで現代にあてはめ、教訓にするのが適切であるかは、非常に難しい問題です。特に本書の場合、既述のように時代に並走しながら、現在進行形の出来事を手探りで書いたものが元になっていますので、その悩ましさはなおさらでしょう。
それを措いても、特に江戸中期以降の科学的思考の萌芽(感染症の性質への理解が進み、お化けや呪いを本気では信じなくなっていく)と先駆的な対策、翻ってスペイン風邪の際の後手後手の対応など、興味深い知見は多く紹介されていました。速水融さんとのエピソードも面白かったので、今度著書を読んでみたいです。