かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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ほん

生産の「急所」と地政学的リスク/『半導体戦争』(クリス・ミラー)

【目次】 同じ土俵での「競争」 中国台頭が招いた新たな展開 「急所」は分散してこそ 半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防 作者:クリス・ミラー ダイヤモンド社 Amazon 半導体技術の黎明期から、それが安全保障上の主要テーマとなった現…

「辺境」から日本史を再考する/『東と西の語る日本の歴史』(網野善彦)・『隼人の古代史』(中村明蔵)・『アイヌ学入門』(瀬川拓郎)など

「日本史」にも地域差があります。京都や江戸で起きたある事象が東北から九州までに同様の影響を与えていたということはあり得ず、そもそもそうした地域の直接的な影響をさほど受けてこなかった地域もあります。そんな視点から、家や図書館にあった本を数冊…

『教養としてのインターネット論』(谷脇康彦)

教養としてのインターネット論 世界の最先端を知る「10の論点」 作者:谷脇 康彦 日経BP Amazon インターネットが社会的なインフラとなり、データに基づいて動くようになってきた社会の展望について論じた本です。 特に興味深かったのは以下の二つの指摘でし…

多元的な明治憲法体制の「奥の院」/『枢密院』(望月雅士)

【目次】 待望の枢密院概説書 政党内閣への牽制 軍部に抗し得なかった理由は 「補助輪役」を誰が担うべきだったか 枢密院 近代日本の「奥の院」 (講談社現代新書) 作者:望月雅士 講談社 Amazon 待望の枢密院概説書 明治憲法体制下で天皇の諮問機関として存在…

「対峙する」だけではないはず/『プラットフォーマー 勝者の法則』(ブノワ・レイエなど)、『集中講義デジタル戦略』(根来龍之)

【目次】 プラットフォーマーに対峙する プラットフォーマーになる 「デジタル戦略」をバランスよく プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法 (日本経済新聞出版) 作者:ブノワ・レイエ,ロール・クレア・レイエ,根来龍…

『ナショナリズムとは何か』(アントニー・スミス)

ナショナリズムとは何か (ちくま学芸文庫) 作者:スミス,アントニー・D. 筑摩書房 Amazon ナショナリズム論における近代主義*1に対峙する最も有名な論者*2の一人が、「入門書」として諸論点を紹介する本です。 抽象的な議論が続くため、正直(私のような)初…

「脱魔術化」するロシアで/『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)

【目次】 文豪最晩年の大長編作品 ロシア社会の脱魔術化と「カラマーゾフシチナ」 宗教の役割は カラマーゾフの兄弟 1 (岩波文庫) 作者:ドストエーフスキイ 岩波書店 Amazon カラマーゾフの兄弟 2 (岩波文庫) 作者:ドストエーフスキイ,米川 正夫 岩波書店 Am…

『何もしないほうが得な日本』(太田肇)

何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造 (PHP新書) 作者:太田 肇 PHP研究所 Amazon 会社、行政、町内会、PTA、そして学校といった日本の様々な組織で「何もしないほうが得」という態度が広まっている状況について論じた本です。 ご…

『だから僕たちは、組織を変えていける』(斉藤徹)

だから僕たちは、組織を変えていける ――やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた【ビジネス書グランプリ2023「マネジメント部門賞」受賞!】 作者:斉藤徹 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) Amazon 時代の転換点に立つ個々人が、内部でど…

『武田三代』(平山優)

【目次】 三代記の決定版 外交を仕掛けた信玄、翻弄された勝頼 「決勝ラウンド」での失敗の重み 武田三代 信虎・信玄・勝頼の史実に迫る (PHP新書) 作者:平山 優 PHP研究所 Amazon 三代記の決定版 武田信虎・信玄・勝頼という三代の興亡を紹介する決定版と言…

ブロジェクトも折り返し地点に/『文系AI人材になる』(野口竜司)

文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要 作者:野口 竜司 東洋経済新報社 Amazon 「文系」云々はともかく(私はド文系で須賀)、エンジニアとして作るだけではない「AIとの仕事の仕方」を紹介してくれる本です。AIとは大まかにいってどんなものか*1、…

『焼酎の履歴書』(鮫島吉廣)

焼酎の履歴書 (発酵と蒸留の謎をひもとく) 作者:鮫島 吉廣 イカロス出版 Amazon もうアル中と名乗るほど飲んでいるわけでもありませんが、実は焼酎自体について何も知らないなと思い至り、紐解いてみました。 「さつま白波」というゴツい芋焼酎で知られる薩…

『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 作者:カズオ・イシグロ,土屋 政雄 早川書房 Amazon 現代イギリスを代表するノーベル文学賞作家の代表作です。 自然豊かな学園寮の描写から始まっていくので須賀、「何かが違う」雰囲気もまた序盤から漂っています。密…

『AI監獄ウイグル』(ジェフリー・ケイン)

【目次】 AIチャットによるレビュー AIをブラックボックスにしないために ランキング参加中読書 AI監獄ウイグル 作者:ジェフリー・ケイン 新潮社 Amazon AIチャットによるレビュー 「AI監獄ウイグル」は、ジェフリー・ケイン氏が著した書籍であり、ウイグ…

『中核vs革マル』(立花隆)

【目次】 中核VS革マル(上) (講談社文庫) 作者:立花 隆 講談社 Amazon 中核VS革マル(下) (講談社文庫) 作者:立花 隆 講談社 Amazon 想像を絶する暴力の連鎖 『中核vs革マル』は、立花隆氏が1970年代に発生した極左暴力集団「中核派」と「革命的共産主義者同…

『日本共産党』(中北浩爾)、『日本共産党の研究』(立花隆)

【目次】 100年史を簡明に紹介 戦前共産党を鮮やかに描く 変わったこと、変わらないこと 100年史を簡明に紹介 日本共産党 「革命」を夢見た100年 (中公新書) 作者:中北浩爾 中央公論新社 Amazon 非合法な状態だった戦前から国政政党化した現在まで、日本共産…

『戦争はいかに終結したか』(千々和泰明)、『国際秩序』(細谷雄一)

【目次】 朝三暮四?のトレードオフ 三つの体系が織りなす秩序 戦争終結と新たな秩序 想像を超える複雑な因果律が編み出すのが歴史で、その切り口も非常に多彩であり得る半面、切って見せる以上は、断面がどんな模様になったか常に問われます。国際政治学に…

『テクノロジーが予測する未来』(伊藤穰一)

【目次】 「アウラ」の復権? 技術は社会を決めない 12年ぶり3度目の… テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる (SB新書) 作者:伊藤 穰一 SBクリエイティブ Amazon NFTを中心に、web3時代の技術と社会を論じる本です。話題のNFTに…

『明治史講義 グローバル研究篇』

明治史講義【グローバル研究篇】 (ちくま新書 1657) 作者:瀧井 一博 筑摩書房 Amazon 明治維新150年を機に企画された国際シンポジウムの内容から編まれた本です。日本の近代化の成功と失敗を世界史の中に位置づけることを主眼に、各国(の人々が)近代日本を…

踏み留まる人として/『大久保利通』(瀧井一博)

【目次】 「知を結ぶ指導者」として 踏みとどまる責任 現代に続く大久保の系譜 大久保利通―「知」を結ぶ指導者―(新潮選書) 作者:瀧井一博 新潮社 Amazon 「知を結ぶ指導者」として 征韓論政変後の明治政府を指導した大久保利通を、「冷厳な専制政治家」と…

『ジョン・ロールズ』(斎藤淳一、田中将人)

【目次】 ロールズ自身の「反照的均衡」 分断の時代に共存の契機を探す ジョン・ロールズ 社会正義の探究者 (中公新書) 作者:齋藤純一,田中将人 中央公論新社 Amazon ロールズ自身の「反照的均衡」 20世紀の政治哲学はこれ抜きには語れない、とされる(そし…

行動経済学つながりで3冊/『予想通りに不合理』(ダン・アリエリー)、『選択の科学』(シーナ・アイエンガー)、『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル)

【目次】 『予想通りに不合理』(ダン・アリエリー) 『選択の科学』(シーナ・アイエンガー) 『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル) 自分自身にも、ビジネスにも、社会課題にも 予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたが…

『LIFE SHIFT2』(アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン)

技術的発明と社会的発明 人生100年時代の「働き方」 「社内転職」をどう生かすか コロナ禍に見た「自由に浮動」する関係 LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略 作者:アンドリュー スコット,リンダ グラットン 東洋経済新報社 Amazon 技術的発明と社…

『ロードバイクの作法』(竹谷賢二)

ロードバイクの作法 やってはいけない64の教え (SB新書) 作者:竹谷 賢二 SBクリエイティブ Amazon www.nhk.jp でお馴染みの「ドクター竹谷」が、脱・ロードバイク初心者のためのアドバイスをまとめた本です。ロードバイクの調整、ペダルの漕ぎ方、乗る時のフ…

自由世界の「北極星」/『メルケル』(カティ・マートン)

メルケル 世界一の宰相 (文春e-book) 作者:カティ・マートン 文藝春秋 Amazon プーチンとの因縁 東ドイツ出身の女性科学者が統一ドイツの首相、そして「自由世界のリーダー」になるまでの軌跡を描いた本です。 ユーロ危機・中東の難民受け入れと台頭するポピ…

『政治学者、PTA会長になる』(岡田憲治)

政治学者、PTA会長になる 作者:岡田 憲治 毎日新聞出版(インプレス) Amazon 民主主義をテーマとする政治学者が小学校のPTA会長に就任してからの、ドタバタや人間ドラマを本人が語った一冊です。 任意団体であるはずのPTAにおいて、なぜこれほどの強制的…

『マネジメント(エッセンシャル版)』(ドラッカー)

マネジメント[エッセンシャル版] 作者:P F ドラッカー ダイヤモンド社 Amazon マネジメントは何のために、どのように進めるべきなのか-。この分野において、世界で一番有名な本だと言って差し支えないでしょう。 エッセンシャル版ということもあってか…

「鎌倉殿の13人」好きならこちらもぜひ/『頼朝と義時』(呉座勇一)

平家との和睦を目指した頼朝 公武関係を大逆転させた義時 「13人」が権力の運用を学ぶまで 頼朝と義時 武家政権の誕生 (講談社現代新書) 作者:呉座勇一 講談社 Amazon 武家政権の誕生に大きな役割を果たした源頼朝と北条義時の事績を追いながら、その歴史的…

主力事業と新事業の「不即不離」/『両利きの経営』(オライリー、タッシュマン)

【目次】 主力事業と新事業は「水と油」? 「不即不離」を保つための試行錯誤 両利きの経営 作者:オライリー,チャールズ・A.,タッシュマン,マイケル・L. 東洋経済新報社 Amazon 主力事業と新事業は「水と油」? 成熟事業を緻密に磨き込んでいく「深化」と、…

『「させていただく」の使い方』(椎名美智)

「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ (角川新書) 作者:椎名 美智 KADOKAWA Amazon 近年、使用頻度も違和感を表明する声も多い「させていただく」の用いられ方や違和感の原因などについて、アンケートや「青空文庫」の定量的な分析なども踏まえ…