かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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蘇我氏・藤原氏から紀伊国造家まで/『古代史講義 氏族編』

 

蘇我氏藤原氏から紀伊国造家まで

こちらのシリーズの「氏族編」です。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

大伴氏・物部氏蘇我氏藤原氏・源平といった有名氏族から、土師氏(菅原氏)、東漢・西文氏、あるいは紀伊国造としての紀氏*1など、知名度は前者に劣るものの興味深い系統までを扱っています。

個別の論点は読んでいただいた方が面白いと思いま須賀、特に古代氏族に共通して印象的なのは、倭王権を支えた頃の氏姓制から律令制への変化に応じて、各氏族のあり方も変わっていった(変わらざるを得なかった)ことです。

必ずしも親戚ではなかった物部氏

例えば物部氏は、何らかの職掌を担って王権に貢献する「部」の一つである「物部」の統率者とされ、必ずしも血縁関係のある集団ではなかった*2といいます。また、一族が父系で継承されていくという観念も律令制以降に定着したもので*3藤原不比等の妻として光明子を産んだ県犬養橘三千代のように、その過渡期にあって母系の影響力を行使した人物もいました。

古代国家の変化と連続性

一方では、ウヂとして(血縁)集団で特定の職掌を担うのではなく、各個人の能力で天皇に奉仕するという律令制の建前がありながらも、藤原北家を中心とする公卿たちは蔭位の制で優遇され、賜姓源氏たちも一世二世はその恩恵にあずかれる、という現実もありました。

こうした古代国家の変化とその連続性を具体的事例とともに知ることができるのは、本書の大きな魅力だと思います。

*1:紀貫之らを輩出した一族とも関係あるものの、紀伊日前宮に拠って現在まで続いているそうです

*2:例えば物部麁鹿火物部尾輿物部守屋もそれぞれ親子関係などではないそうです

*3:そして今、それが問い直されつつあるわけで須賀