元・神戸新聞記者である著者が、秋田魁新報、琉球新報、毎日放送、瀬戸内海放送、京都新聞、東海テレビ放送といった地方メディアのジャーナリストを追いつつ、ローカルだからできる報道・果たせる役割は何かを考える本です。
登場するのは、現場に足を運び、人の話を聞き、主張よりも事実を淡々と記録していく記者たちです。著者は、その地道かつ地元の一員として逃げ隠れしない(そもそもできない)姿勢、さらに言うと「大阪ジャーナリズム」に代表される中央=東京へのある種の反骨意識に、ジャーナリズム全体が細る現状における希望を見出そうとしています。
報道の使命の一つに、(公私を問わず)権力の監視があります。これを果たしていく上で、東京という政治経済的な権力の中枢の外にいることは、重要な意味を持つということなのでしょう。一方本書の例でいえば、京都新聞と東海テレビが向き合っている事柄は、当の報道機関自体が一つの権力であることを示しており、(地方)メディアと権力を巡る両面の問題に目配せできる構成となっています。
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その上で個人的関心から一つ言えば、取材においても報道においても収益化においても、すでに避けて通れなくなっているデジタル化に各社がどう向き合っているか、その点について言及があるとなおよいのではと思いました。