かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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安倍首相辞任/ここから問われる日本民主主義の真価

体調不良を理由に、安倍晋三首相が辞任を表明しました。体調を理由に途中で辞めることについては、ご無念だろうと思います。

第二次安倍政権は、安全保障法制や臨時国会の開会などを巡って、憲法の明文規定や全体としての規範を踏みにじり続け、森友・加計・桜を見る会など数多くの問題でも「政権の私物化」を指摘され続けてきました。「危機管理に強い」はずが、コロナ対応でも迷走を重ねました。首相が憲法を守らない、「責任を痛感する」とは繰り返してもその責任を果たさない、そんな政権が、数度の国政選挙を経て7年8カ月も続いてきました。そのことに改めて、愕然とします。

本当にずっと、この政権が一日も早く終わるように願い、その時々の行動をしてきたつもりで須賀、それがこのような形でもたらされることについては、とても残念な思いです。本来は、野党やジャーナリズム、そして世論がこれまでの政権運営の非を問いただし、退陣に追い込むべきでした。それがこそが、この政権の総括であるはずです。これで安倍政権は終わりま須賀、「アベ政治」が終わるかどうかは、これからが正念場です。

ここから数年が、日本民主主義の真価が問われる時期となるでしょう。

 

辞任会見、全部見ましたが、辞任に直結した理由や安倍首相の思いは(プロンプター抜きでも)率直に言ってあまり伝わってきませんでした。そのあたりはこの先、ジャーナリズムが解き明かしていく必要があるのでしょう。

 

 

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『テレワーク大全』(日経BP総合研究所イノベーションICTラボ)

 

テレワーク大全

テレワーク大全

  • 発売日: 2020/06/04
  • メディア: Kindle
 

テレワーク推進に必要な準備やノウハウ、先進企業の事例などを紹介する本です。内容的に「大全」というよりは、雑多な内容を含むTips集という表現の方が近い気がします。

「テレワークあるある」的なコーナーなど、勉強になった点も多くありましたが、一番印象的だったのは事例紹介の部分でした。テレワークを推進している複数の企業リーダーや責任者が、インタビューの中で「全てテレワークにすればよいわけではない」「テレワークにも課題があり、解決策を模索している」などと述べています。そして、これらの企業は新型コロナ感染拡大前から、働き方改革に向けた試行錯誤を重ねていました。

「外出自粛だからとにかく在宅勤務だ」では、「コロナ後」は「仕事は会社で」に逆戻りするだけですし、各人の働き方や会社の生産性を改善していくことには繋がっていかないでしょう。働き方を多様化していく、時間外労働を減らしていく、日々のワークフローに新たな刺激が加わる仕掛けを取り入れていくー。そうした取り組みのための有力な一手段として、テレワークを位置付けることが重要なのだと感じました。

 

私個人としては、4月以降、社内で最も在宅勤務を利用したうちの一人に入ると思っています。この時期に妻の出産があったこと、上司の理解があったことなどいくつか理由はありま須賀、個人的に最も大きかったのは、その少し前に起こった「案外テレワーク出来ちゃうじゃん」体験でした。

今年の1月、九州の祖母が体調を崩し(一時的にかなり危険な状態に陥り)、急遽病院に駆けつけました。確かそれが月曜日でした。当時は外部に対する締め切りを複数抱えていたため、仕事道具を抱えて飛行機に乗り込みました。

当然、現地では祖母の見舞い(当時は、サポートと言えるほどのことができる容体ではありませんでした)を最優先に過ごしたわけで須賀、空いた時間を活用して提出物を準備し、お客さんの問い合わせにも対応していました。それで1週間、最低限のことは出来てしまったんですよね。こういう場合に仕事を誰かに引き継げるようになっていなかったというのは大きな反省点ではあるので須賀、遠く離れた場所からでも、できる仕事はたくさんあることには気付かされました。そこが私の原点だったように思います。

もちろん、テレワーク一本で働くデメリットも感じました。この本にもあるように、最大の課題は同僚とのコミュニケーションでした。わざわざ電話やメールをするほどのことではないけれど、なんとなく感覚を聞きたいことや知っておいてほしいことはあります。仕事を頼もうとしている相手がどのくらい忙しいのか、翻って自分の状況を相手は分かってくれているのかー。チャットツールも活用して、「今日は余裕がありますよ」「今週は急ぎが多いからそちらを優先させてください」といったニュアンスを匂わせるよう努めてきたつもりで須賀、対面でやるほど上手くはいきません。そのせいか、4月以降は平均して週1で出社していましたが、大抵その日は打ち合わせや相談事が重なり、退社時間が遅くなってしまうことが多くありました。チャットや電話でよく話す同僚も、やはり私の顔を見たら見たで、対面で話したいことがあるような雰囲気でした。対面とテレワークを上手く併用し、またテレワーク時のコミュニケーションの取り方について事前に話し合っておくことで、復帰後も「いいとこ取り」をしていきたいと思っています。

私にとっては1月の急な帰省でしたが、4月以降の状況が初の本格的なテレワーク体験だった人も多いのだろうと思います。それを働き方改革の選択肢としてどう練り上げていくか、改革全般にどう位置付けていくかが、「ニューノーマル」とされる今こそ、求められているのでしょう。

 

 

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「とりあえずビール」のルーツは戦中のビール配給制?/『居酒屋の戦後史』(橋本健二)

 

居酒屋の戦後史 (祥伝社新書)

居酒屋の戦後史 (祥伝社新書)

  • 作者:橋本 健二
  • 発売日: 2015/12/02
  • メディア: 新書
 

社会学を専門とする著者が、「フィールドワーク」を交えながら戦後の酒文化・居酒屋文化を分析し紹介する本です。

▽戦前の屋台をルーツに持つ闇市が、やがて駅前に移転するなどして戦後居酒屋の重要な起源となったこと▽元々ビールは高級酒だったが、戦中や戦後の混乱期に配給されるようになってから大衆化・味の画一化が進んだこと▽原酒の割合によって序列が生じたウイスキーは、高度成長期に社会的地位と結びつくことで日本酒とビールに次ぐ普及を見せたこと▽高度成長末期に到達した経済格差も飲む酒の違いも少ない「酒中流社会」が、近年の格差拡大で崩壊したこと*1▽そしてその格差が酒文化全体の衰退を招きつつある(=そもそも経済的理由で酒が飲めない人が増えているとみられる)ことーなど、酒を嗜む人にとって非常に興味深い歴史的背景や洞察が多く盛り込まれています。

高見順坂口安吾といった文化人の日記から小津映画まで、豊富な資料を渉猟しながらも、酒への愛に満ちたフィールドワークやインタビューを重ねた成果が感じられます。一方で、格差社会論における知見を生かし、データに基づいた問題提起がなされており、多彩なアプローチも本書の特色でしょう。ひとつだけ欲を言えば、東京以外の飲酒文化の展開についても知りたいところです。関西圏など、いわゆる「東西の差」がありそうなテーマでもありますので…

classingkenji.hatenablog.com

著者のブログを拝見すると、コロナ禍の下でも「フィールドワーク」を完全に休止しているわけではないようです。記事で指摘している通り、昨今の状況は「居酒屋の戦後史」の大きな転換点になっていくでしょう。家飲みが増え、「オンライン飲み会」も話題になりました。その反面、居酒屋店舗数の減少傾向が加速したことは間違いありません。そしてそれは、著者の言う酒文化の継承にとって、危機的な状況であるはずです。コロナ後の酒文化がどうなっていくのか、続編に期待したいです。

 

 

 

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*1:高所得層になるにつれてワインの消費が顕著に増え、最貧困層発泡酒も飲めない

『英単語の語源図鑑』(清水建二、すずきひろし)/楽しく学ぶモチベーションに

 

英単語の語源図鑑

英単語の語源図鑑

 

英単語の語源を紹介しながら、語彙を増やすことを目指す本です。

例えば「attraction」という一つの単語は、「at」(〜の方へ、を意味する接頭辞)「tract」(引く、を意味する語根)「ion」(名詞化する接尾辞)に分けられ、合わせて「引きつけるもの」即ち「魅力」という意味になる、と説明します。このように各要素の語源を理解していれば、未知の単語に遭遇した時にも、その大まかな意味を想像することができるようになります。その効果による語彙力アップを謳っています。

漢字でも似たような類推が可能なことは知られていま須賀、語源を知って目から鱗、というような単語もあり、とても興味深かったです。

楽しい漢字教室

楽しい漢字教室

  • 作者:石井 勲
  • 発売日: 1990/12/01
  • メディア: 単行本
 

 ただ意味を予想するための方便として紹介するのではなく、ギリシャ語やラテン語の由来にも触れており、納得感もありました。一方で、同じ意味の要素同士が組み合わさっていながら、全然意味・用法が違うというケースも多くあり(それは手法というより本の紙幅の問題と思われます)、これが「語彙力アップ」にどこまで直結するのか、ちょっと未知数な気もしました。

話は逸れま須賀、韓国・朝鮮語には漢語由来の語彙が多くあり、元の漢字とハングルのスペルの対応関係が分かれば、新聞記事などは(漢語が多いので)かなり読みやすくなります。音に影響するとされる「つくり」が同じ漢字同士では、同じ綴りになるケースも多いようです(体感)。

そうした知識は、もちろん目の前にある外国語の意味をよりよく・効率的に理解するために役立つものではあるので須賀、それよりも何よりも、楽しく学ぶための非常に大きな助けになるのではないかと感じています。この本に出ている語源を暗記するというよりは、読んで楽しんで、次は他の単語で試してみるためのモチベーションにするのが一番良いような気がしています。

 

 

 

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親子の2020年7月読書「月間賞」

長男はこちら。

大好きなゾロリシリーズの最新刊です。本人曰く、「怪しい人がたくさん出てきて面白い」のだそうです。妻の友人がくれた図書カードを使って自分で買ったので、その辺の思い入れもあるのかもしれません。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

私はこの本にしました。試みや成果物(カラー化された写真)自体の興味深さももちろんありますけれども、それを触媒として75年前、あるいはもっと以前の現場に居合わせた人たちの記憶が「解凍」されていく点がとても素晴らしいと思っています。反響も非常に大きいようですね。

 

 

 

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『啓蒙とは何か』(カント)、『カント』(熊野純彦)

 

啓蒙とは何か 他四篇 (岩波文庫 青625-2)

啓蒙とは何か 他四篇 (岩波文庫 青625-2)

  • 作者:カント
  • 発売日: 1974/06/17
  • メディア: 文庫
 

先日『西洋政治思想史』(宇野重規)を読んだ際、「紹介されている古典を何か一冊読んでみよう」と思い至り、この本を手に取ってみました。

一言で言うなら、啓蒙とは自分で考える勇気を持つことだーそう書いてあります。「啓蒙」と聞くと、上から目線で一定の結論を押し付けられるかのような語感を与えがちで須賀、そうではないわけです。典型的には、「啓蒙専制君主」はまず以って「啓蒙された君主」であるともされます。

 

個人的に印象的だったのは、カントがこの小篇の中で、プロイセンのフリードリヒ2世を啓蒙主義の代表的人物として絶賛していた点です。『永遠平和のために』のような、現在に至っても実現したとは言い難い大構想を掲げた哲学者が、このような「時事的な」言及をしていたのは正直なところ意外でした。

canarykanariiya.hatenadiary.jp *1

もう一つ。『啓蒙とは何か』には他に4篇が収録されており、カントの議論の全体像に通じていない私にとってはそちらが結構重たかったので須賀、そのうちの一つ『理論と実践』に、ガルヴェ教授という人物への再反論が含まれていました。そのガルヴェ教授に関する注を見てみると「当時の高名な通俗哲学者」とあります。

それが一概に悪いことだとは全く思いませんが、自分の国の王様を褒め称えていたカントにも、一定程度の「通俗的」な面はあるように見えます。そんな彼が、ガルヴェ教授のように「当時は高名だった(けれども今はそうではない)通俗哲学者」と見做されなかったのはなぜなのか、すなわち著作が「古典」として、200年以上後の東洋の異国でも版を重ねているところの卓越性はどこにあるのかー。そうした疑問も湧いてきます。

それに答える一つの切り口を示してくれたのが、(実はたまたま書棚にあった)こちらの本でした。

カント 世界の限界を経験することは可能か (シリーズ・哲学のエッセンス)

カント 世界の限界を経験することは可能か (シリーズ・哲学のエッセンス)

  • 作者:熊野 純彦
  • 発売日: 2002/11/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

かなりポイントを絞った一冊で須賀、「世界は有限か無限か*2」「神の存在は証明できるのか」「理性が知り得ることと知り得ないことは」といった問いから、カントが常に「境界上に身を置く思考」を重ねてきたことが感じられるようになっています。そして本著の著者によれば、それこそがソクラテス以来の、哲学的な思考そのものであるのです。

 

 

 

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*1:これ読んだの12年前か…

*2:この議論の中で出てくる「世界とは、経験を超えた、経験じしんの地平である」という一文がとてもしっくりきて気に入ったので、ここに書き残しておきたいです

3カ月間の育休に入りました

本日から11月15日までの3カ月間、育休を取得します。

2カ月前に生まれた長女と、のんびり過ごす予定です。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

6年前、長男の時は2カ月間だったので須賀、今回は1カ月多めにいただきました。妊娠中には「妻がすぐ職場復帰するので半年ください」という交渉を会社としたりもしていましたが、妻の仕事の兼ね合いでその線がなくなり、期間も前回ベースで相談しました。前回は、社内であまり「パパの育休」の例がなかったということもあり結構驚かれましたが*1、この6年で長期で休むパパも増え、職場にもすんなりご理解をいただけたと思っています。感謝しています。

前回と変わった点としては、3カ月のうち1カ月間を制度としての「育児休業」として取得することです。さすがに3カ月分の有給休暇なんて持っていませんのでそうせざるを得なかったわけで須賀、いざ調べてみると、会社の休業支援制度なんてのも実はあったりして、育児休業給付金と合わせると月給とあまり遜色ない収入がありそうです。こういうことは、調べて使ってみると世の中のことがわかって勉強になりますね。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

本人はもうすぐ生後2カ月です。もちろん毎日ではありませんが、よく寝る子です。先週くらいから、一生懸命声を出したり、笑いかけると笑い返したりしてくれるようになりまして、在宅勤務の癒しでした。

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長女近影

生まれた直後から我が家で面倒を見ていて、そこから1カ月間は夫婦ともに疲弊気味なところはありましたが*2、ここで私も育児に専念できるようになりましたので、これまでよりは余裕を持って、家族の時間を楽しめるのではないかと期待しています。

一方で、懸念しているのは新型コロナウイルスの感染拡大です。前回そうしたように、期間中、自分のお里に長女を連れて帰りたいと強く思っています。来年卒寿を迎える入院中の祖母に、本当は直接報告をしたいです。ただ、それが典型的に危険なパターンであることはもちろん理解しています。この状態が続くなら、帰る判断は難しいかなと感じていますし、しばらくの間に改善する要因はないように見えます。

なので、本当に家にいる3カ月間になるかもしれません。そうだとしても、家族とのコミュニケーションを大事にしながら、私個人としても一日一日、目標を持って過ごしていきたいです。そして、来し方行く末に思いを致すといいますか、11月16日朝の日常の景色がこれまでとは少し違って見えるように、仕事をする日々とは違う意味で充実させていければーそう思っています。

 

 

 

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*1:そのせいか連載記事を書くことにもなりました

*2:本来、この時期こそ休めればというところではあったので須賀、退院後まっすぐ家に連れ帰るというのも結構急な判断だったので、在宅勤務にご理解いただくにとどめました