かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『「右翼」の戦後史』(安田浩一)

 

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

 

当事者らへのインタビューを交え、終戦前後から現在までに至る「右翼」の諸潮流の歴史を紐解いた本です。

終戦後に集団自殺*1をした人達や、反共のために親米に立ち位置を取り、権力からの働きかけもあって自民党を支える動きを取った例えば「行動右翼*2達、「新左翼」と反響し合いながら「親米右翼」への異議申し立てを続けたいわゆる「新右翼」、宗教右派の流れから草の根の元号法制化運動を成功させ、現在の日本会議に連なる潮流、そしてついには既存の右翼を併呑ようにすらなった「ネット右翼」など、「右翼」というワードに括られる人達の多様な思想やありようを描写しています。各勢力の系統関係・人間関係が押さえられていて、教科書的な戦後史では断片的にしか見えない繋がりを知ることができた気がします。

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著名な著作である『ネットと愛国』でも描き出しているように、「一見普通の人」がヘイトクライムを起こし、中央省庁までもがヘイトスピーチを「尊重すべきご意見」として承る今、社会そのものが極右化している、と著者は喝破します。政権がそうした感情を利用して隣国との相互依存関係を破壊し、それが社会に反響して露骨な嫌悪表現が蔓延るー。この1ヶ月ほどの間に日本で起こっていることも、この「社会の極右化」を非常に端的に示しているように思えます。

 

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*1:敢えて自決とは言いません

*2:街宣車から演説や軍歌を流すなど、示威行為を重んずる

『いまさらですがソ連邦』(速水螺旋人、津久田重吾)

 

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

 

もちろん今はなきソ連について、その歴史や軍事・諜報、経済、市民生活や文化などをイラストを交えて解説した本です。

古くからロシアではなくソ連渡航を重ねている愛好者が、しばしば現在進行形の文体でリアルなソ連情報を語っています。以前さらっと観光してしまったモスクワの名所の、ソ連時代の様子も知ることができて興味深かったです。当時この本があれば、読んでから出掛けたかったですね。

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私がソ連・ロシアに抱く関心の一つに、「社会主義の祖国」であるという点があります。要するに北朝鮮への影響や比較論というところになりま須賀、やはり公定価格と実勢を反映したヤミ価格が乖離していくというのは、両者共通していました。この本を読む限り、北朝鮮よりソ連の方がそれが緩慢に進んできたようで、それが北朝鮮の経済・政治体制にどのように影響してくるのか、予断は許さないのかなあという気は改めてしました。

 

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対北朝鮮ちぐはぐ外交の内幕/『ルポ 金正恩とトランプ』(牧野愛博)

 

ルポ 金正恩とトランプ 米朝の攻防と、北朝鮮・核の行方

ルポ 金正恩とトランプ 米朝の攻防と、北朝鮮・核の行方

 

朝日新聞記者である著者が、シンガポールハノイ米朝首脳会談の舞台裏を報告した本です。内部統制が取れないままシンガポールでの「失地回復」に躍起になる米国、楽観的に過ぎて前のめりな韓国、そしてやはりリーダーが猪突猛進型の北朝鮮が、北朝鮮の核問題を巡りどのような(ちぐはぐな)外交を展開したかがリアルに活写されています。

特に米韓のちぐはぐさには、トランプ・文在寅両大統領の政治ショー的な手法が寄与していると著者は指摘します。複数国で歩調を合わせなければならない外交課題がある場合でも、リーダーが政治ショーを通じてそれぞれの国内世論の方を向いた振る舞いをすれば、それが叶うはずもありません。

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以前読んだ本の一番最後にこんなことが書かれていましたが、現状では「強い決意に基づき長期にわたって緩みなく」「政策の一貫性」を保っていくことは、現状では望むべくもないことなのかもしれません。

核開発を進める側は、強い決意を持って長い時間をかけて少しずつこれを進めていくのが常である。したがって、これを防ごうとする側にも、強い決意に基づき長期にわたって緩みなく核拡散防止のための措置を取っていくことが求められる。核拡散防止の観点からの政策の一貫性はとれているのか… 

ちなみにこの本は、近所の図書館で借りて読んでみました。流石に本が増えてきたということもあり、長期的に手元に置かなくてもよさそうなものは借りて読もうという試みです。時事的な内容ならそれでいいかな、というのがこの本に関する判断だったので須賀、買っておいてもよかったかもしれないと思えるくらいの内容でした。

 

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『故郷忘じがたく候』(司馬遼太郎)

 

新装版 故郷忘じがたく候 (文春文庫)

新装版 故郷忘じがたく候 (文春文庫)

 

 

秀吉の朝鮮出兵以降、薩摩の苗代川という集落に住み、代々上質の「薩摩焼」を生産し続けた朝鮮出身の人々がいます。この本の表題作である「故郷忘じがたく候」は、その著名な窯元である14代沈寿官氏と著者の交流を中心に、彼らの歴史を語った作品です。ゴリゴリの歴史小説ではありませんが、司馬遼太郎らしい筆致から、14代の人柄や苗代川の風情が浮かび上がってきます。

14代が1966年にソウル大学で講演し「あなた方が36年をいうなら私は370年をいわねばならない」と語ったエピソードや、当時の朴正煕大統領と酒を酌み交わした話など、当時の韓国社会の一面も垣間見えて興味深かったです。

苗代川という地域は今は「美山」というそうで須賀、行ったことがないので一度訪ねてみたいですね。

ちなみにこの14代沈寿官氏は今年の6月に亡くなられていたのですね。本を手に取ったタイミングとしては本当にたまたまだったので須賀、ますます気になる存在になりました。

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「斬殺」は戊辰戦争時の伊達藩を中心とした奥州情勢が、「胡桃と酒」は細川忠興に嫁いだ明智たま(細川ガラシャ)が題材となっていて、こちらも楽しくページをめくれる作品です。

 

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バハマ&アメリカ滞在記十二日目・帰国

本当に駆け足で来ましたが、もう帰国日です。

この日もこの日とて、空港まで車で送っていただきました。いわゆるラッシュアワーだったので、アトランタ名物の渋滞を回避すべく、迂回した経路を取ってくれました。

空港で改めてお礼を言って、しばしのお別れです。

アトランタからは直航便で帰ります。席の都合で私だけ並びではなかったので、本を読んだり細君お薦めの映画を見たりして過ごしました。

才能に恵まれた人も人間である以上、弱さや限界があって、彼が人一倍難局や落とし穴も多い人生をどうくぐっていくか、これは誰を責められることでもなく難しいなあと思いました。細君は、行きも帰りもこれを見て泣いていましたが…。

日本に着いたのは翌日の昼下がり。バハマも日差しは強かったで須賀、いないうちに長梅雨から酷暑モードになった日本の夏をどうやり過ごすか、考えただけで少しげんなりしてしまいました。

〈糸冬〉

あとがき

最後にいくつか、改めて書かせてください。

まず今回は特に、行き当たりばったり旅行とは対照的な滞在でした。バハマも観光資源の整備されたリゾート地でしたし、アトランタでは親類の家に泊めてもらい、多くの時間を一緒に過ごしました。アトランタには1週間滞在しましたが、アトランタの観光地を「行き尽くした」わけでは全くありません。キング牧師やカーター元大統領に関する施設には機会があれば行きたかったですし、近隣にはストーンマウンテンという景勝地もあります。

それでも、限られた時間をホスト家の皆さんと共に過ごすために使えたことは、よかったと思っています。観光地を周遊することは、その街に行きさえすればいつでもできます。しかし、そこに住む人たち、特に自分たちにとって身近な人たちの日々の暮らしを肌で感じ、感覚として理解していくことは、こういう機会でないとできないことです。アメリカの地域図書館で毎週開かれている読み聞かせ会はどんな雰囲気だったか、そしてその時、姪っ子はどんな様子で遊んでいたかー。それらは、有名観光スポット巡りとは比べられない有益な、そして素敵な記憶になるでしょうし、長男にとってもそうであることを願います。そんな理屈は抜きにしても、1週間にわたり泊めていただき、そして多くの時間を割いてあちこちを案内してくれた義妹夫婦には感謝しかありません。喜ぶべき事情から、そう遠くない未来にまた会えることになりそうですので、その時にも再度、お礼の気持ちを伝えたいと思っています。

次は瑣末かもしれませんが、「書くことの意味」を感じることができたと思います。「滞在」としての性質上、このような形で旅行記めいたものを書くかどうか、実は少し悩みました。ただやはり、言語化することによって初めて気付くことや、調べが及ぶことというのも少なからずありました。記録に残すということ以上の意義が、ここにはあると思えました。

 最後はこれです。

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jp.usembassy.gov

この旅行中、2011年3月以降に北朝鮮渡航した人はビザ免除プログラムの対象外とする、と発表されました。正確にいうと、これはイランなど7カ国に対する措置に北朝鮮を追加したものです。

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特にイランは割と「スレスレ」でして、何も悪いことはしていないながらも、ESTAを申請する際は少し身構えました(笑)

個別政策的な是非はともかくとして、制裁や安全保障上の理由で、特定国との人的往来を制限するオプションが存在することは理解します。もし私のイラン入国が1年後であっても、アメリカに完全に入国できなくなるわけではありません。ただ、こういう形で人的な交流が妨げられるのは残念だという気持ちも拭い難くあります。特に今の政権からは「お前なんか来なくていい」と言われそうで須賀、アメリカの「行きにくさ」は感じさせられる報道ではありました。

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アトランタ空港で売られていたチョコレート

最後にする話ではなかったかもしれませんが、今回がそういう旅行だっただけに、アメリカに身内がいる立場として触れておきたかったのです。

オチは確実についていない感じで須賀、毎度ながらご覧いただいた方に感謝申し上げて完結とさせていただきます。

(2019年8月15日午前6時半、自宅書斎にて)

バハマ&アトランタ滞在記十一日目・地域図書館

アメリカの図書館訪問

実質的な最終日も、近所で過ごします。

午前中は近所の図書館に出かけます。「toddler time」と銘打って、幼児向けの読み聞かせや歌が楽しめる催しが開かれていました。

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催しの会場。スクリーンなどを使った遊びもありました

先生役は明るいお姉さん*1で、短い絵本を読んだり、みんなで遊び歌を歌って身体を動かしたり、音の出るおもちゃを使ったりと、様々な仕掛けで盛り上げていきます。

子供達も、一緒に歌って踊ったり、自由に歩き回ったり。親子30組ぐらいが参加していたでしょうか。地域特性もあるのかもしれませんが、アジア系の親子が目立っていた気がします。同じ地域出身などの「ママ友」を作る機会にもなり得るでしょうし、英語ネイティブの子供達のみならず、移民や駐在員の子弟にとっても有益な場であると感じました。日本の図書館の読み聞かせも、よりそういう機能を果たしていけるといいですね。

図書コーナーはこんな雰囲気です。

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全体的に子供向けの本が多い印象でした。

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読み上げ教材的なキットや、奥には(アメリカから見た)外国語の本も。外国語の本も英語と照らし合わせているものが多く、ネイティブでない子供の英語学習を支援する仕組みが充実しています。長男は、機関車トーマスの絵本を借りられてご満悦でした(笑)

最後は再びバーベキュー

その後は昼食や食後のアイス、噴水遊びなどを楽しんで帰宅。最後にまた、プールにも行きました。

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お昼を食べたレストラン

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アイス屋さん。好きなものをトッピングして従量で支払います

夜は本当に最後なので、またバーベキューを開いてくれました。肉を焼くのにも前回よりは慣れ、和気藹々と食事することができました。

*1:義妹曰く、このお姉さんの回は人気なのだそうです

バハマ&アトランタ滞在記十日目・近所でのんびり

居住区のプールとカレー作り

ここからの2日間は、泊めてもらっている義妹宅の周辺で過ごします。

午前中はホスト家の皆さんが出払っていたので、私たち3人で居住区内のプールで遊びます。居住区内には住民共用のプールが設けられていて、キーを持っている人は開けて利用することができます*1

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平日の午前10時だとほぼ貸し切りでした。

午後はスーパーで材料を買って、私達夫婦でカレーを作ります。たまたまルーが中辛しかなくて、牛乳やら砂糖やらを入れて子供達が食べられるような味にするのに一苦労でした。

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私が唯一、人並みに作れる料理

真ん中はスーパーで買ったクラフトビール麦芽よりココナッツやパイナップルの味が強いという、なかなか個性的なお味でした。

*1:柵を飛び越えてくる元気な若者もいるようで須賀…