かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『「右翼」の戦後史』(安田浩一)

 

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

 

当事者らへのインタビューを交え、終戦前後から現在までに至る「右翼」の諸潮流の歴史を紐解いた本です。

終戦後に集団自殺*1をした人達や、反共のために親米に立ち位置を取り、権力からの働きかけもあって自民党を支える動きを取った例えば「行動右翼*2達、「新左翼」と反響し合いながら「親米右翼」への異議申し立てを続けたいわゆる「新右翼」、宗教右派の流れから草の根の元号法制化運動を成功させ、現在の日本会議に連なる潮流、そしてついには既存の右翼を併呑ようにすらなった「ネット右翼」など、「右翼」というワードに括られる人達の多様な思想やありようを描写しています。各勢力の系統関係・人間関係が押さえられていて、教科書的な戦後史では断片的にしか見えない繋がりを知ることができた気がします。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

著名な著作である『ネットと愛国』でも描き出しているように、「一見普通の人」がヘイトクライムを起こし、中央省庁までもがヘイトスピーチを「尊重すべきご意見」として承る今、社会そのものが極右化している、と著者は喝破します。政権がそうした感情を利用して隣国との相互依存関係を破壊し、それが社会に反響して露骨な嫌悪表現が蔓延るー。この1ヶ月ほどの間に日本で起こっていることも、この「社会の極右化」を非常に端的に示しているように思えます。

 

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*1:敢えて自決とは言いません

*2:街宣車から演説や軍歌を流すなど、示威行為を重んずる