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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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最新情勢も詳細に/『最新版 北朝鮮入門』(礒崎敦仁、澤田克己)

【目次】

 

2024年冒頭まで紹介

『LIVE講義 北朝鮮入門』(礒粼敦仁、澤田克己) - かぶとむしアル中canarykanariiya.hatenadiary.jp

の最新版が出たとのことで、買って読んでみました。2024年冒頭までが扱われており、金正恩体制下の近況がしっかり扱われているのが最大の特徴です。章立てが国内政治史・政治体制・安全保障(核とミサイル)・経済・社会・外交(日朝・米朝・南北・中朝)とテーマ別になっており、特に政治や安全保障と外交は話の行き来が多くなってはいま須賀、その辺は好みでしょうか。

「韓国は外国。」それなら…

直近の展開が詳述されている点を受けて、特に興味深かったことを二つ。一つ目は、金正恩体制が「二つのコリア」を前提とした言動を国内外で繰り返していることのインパクトです。具体的には「わが国の領土は朝鮮全域であり、たまたま南側は米帝の傀儡政権に不法に占拠されているだけである」という見解から「我々は平壌を首都とする朝鮮半島北部を領域とする国で、南の大韓民国は外国である」に転換したことを指します。

著者によると、これは南との体制間競争での劣位が動かしがたくなった側の「現状維持のための言辞」とのことで、もちろんそれは前提にあるはずで須賀、これが定着すれば*1北朝鮮を巡る国際関係に大きな変革をもたらす可能性があると感じています。北朝鮮と韓国が「外国」であるなら、両者が別の国家として国交を結ぶ選択肢が生まれますし、(中台関係とは対照的に)既に進展しているように南北両方と国交を結ぶ国は更に増えるでしょう。

ウクライナ侵攻や台湾情勢の緊張などによって「日米韓」と「中ロ朝」の対立が顕在化している今、簡単にイメージできる話ではありませんが、将来的に韓国と北朝鮮が国交を結んだ時、例えば日朝は頑なに国交正常化交渉を拒み続けるのでしょうか?ここには小さいながら、東アジアの国際関係を変える一つの契機があると見てもよいのかもしれないと想像しています。

改めて「金主」を掌握できるか

もう一つは、金正恩時代の(「苦難の行軍」期と比べた)経済復調傾向が着実に新興富裕層を生んでいる点です。まさに、

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でも触れたように、社会の新興勢力をうまく取り込めるかは、独裁体制を維持できるかの重要なポイントとなります。「コロナ後」で経済活動が再活性化する中で、政権が国内でどのような政策を展開するのか、こちらも注意が必要だと感じました。

 

*1:現体制は方針や組織・制度の変更が目まぐるしいとも指摘されており、その点は注意が必要でしょう