かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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「対峙する」だけではないはず/『プラットフォーマー 勝者の法則』(ブノワ・レイエなど)、『集中講義デジタル戦略』(根来龍之)

【目次】

 

プラットフォーマーに対峙する

「2つ以上の顧客グループを誘致・仲介し結びつけ、お互いに取引できるようにすることで大きな価値を生み出す」プラットフォーム企業について、その特徴、成長のためにフェーズごとに取り組むべき施策、内外から見た課題などについて論じた本です。

やはり新聞社の目線に立つと、プラットフォーム企業とどのような関係性を築くべきかがポイントであり、ホットなところでもあろうかと思います。著者は「毛嫌いするだけでなく、現実を認めてうまく提携しつつ、自らを強化すべき」と説いていま須賀、今はまさに「うまく」提携していると言い得る関係を(再)構築できるのかが問われており、プラットフォーマー側がどの程度真摯に共存共栄を目指しているのかはやや気になるところです。

一方で、「高い品質と一貫性を保つためにバリューチェーンを厳しく制御するのはプラットフォームの不得意分野なので、こちらに投資するのも手」とも述べられています。プロのジャーナリストの取材・編集ノウハウを生かした正確で独自性のあるコンテンツ制作は、まさにこれに該当するはずですので、苦しくてもここにはちゃんとリソースを割いていくことが生き残りの条件になってくると感じます。

プラットフォーマーになる

ここまでプラットフォームに対峙する話ばかりしてきましたが、新聞社自身がプラットフォーム型のビジネスモデルを取り込んでいくことも重要な検討課題であるはずです。プラットフォーマーの世界的な代表例とみなされがちなamazonも、プラットフォーム型とそれ以外のビジネスモデルを組み合わせていることを本書は度々指摘しています。GAFAのような「巨人」を目指せという趣旨ではありませんが、広告だけでもサブスクだけでもない多様な収益源を確保していかざるを得ない状況において、新聞社に幾許かの存在感や社会的信頼が残っているうちに行動しなければならないのは間違いないように思えます。

「デジタル戦略」をバランスよく

こちらは、1冊目の訳者のビジネススクールでの講義をまとめた一冊です。やや古いで須賀、「破壊的イノベーション」「ジョブ理論」「ブルーオーシャン」「両利きの経営」といった世界的に著名なビジネス上の理論を咀嚼し、よくまとまっている本だと思いました。

この方も新聞協会での講演が非常に興味深かった覚えがあり、一度読んでみたいと思っていた本でした。