かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『ジョブ理論』(クレイトン・クリステンセン他3人)

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

  • 作者: クレイトン M クリステンセン,タディホール,カレンディロン,デイビッド S ダンカン,依田光江
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2017/08/01
  • メディア: 単行本
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著名な経営学者である著者らが、企業におけるイノベーションを(運任せでなく)予測可能なものにするために実践すべき「(片付けるべき)ジョブ理論」について論じた本です。
この理論は、「顧客がある商品やサービスを雇用している(買っている)のは、何らかの片付けるべきジョブがあるからであり、それが何かを理解することでイノベーションにつなげることができる」と主張します。本書に出ていた例えでいえば、午前中にミルクシェイクが売れるのは「通勤のドライブ中の退屈と空腹をしのぐため」である一方、夕方に父子連れが買うのは多分に「父から子供へのささやかなプレゼント」としてであって、それぞれ競合する相手が違う*1。そこに気付くことができれば、そのジョブに合わせた戦略を立てられる…といった具合です。
その際言及されるのは、定量的なデータ分析との違いです。年代や性別、職業などでセグメントして相関関係を浮かび上がらせたとしても、それは「なぜそれを雇用するのか」という因果関係を解明するわけではないと、著者は度々強調します。そしてジョブを炙り出すため深い洞察を行うこと、その上でジョブに主眼を置いた組織作りに集中することなどの重要性を挙げているのです。
以上が本の内容のざっくりとした要約(のつもり)です。正直この本と対峙するための道具立てがそもそも自分にないことは分かった上で言うなら、市場などを調査する上での着眼点や手法といったところでしょうか。ジョブを炙り出すためのインタビューも収録されていてイメージしやすくはなっているので生姜、主張の内容としては真っ当に聞こえるからこそ、言うは易し行うは難しという印象がやや拭えませんでした。あーこれは別にこの本を批判しているわけではありませんで、多分言うのも行うのも簡単なら本にまとめる必要はそもそもないわけで、本そのものを評価するなら、難しい実践へ向けての重要な道標である、と言っていいのだろうと思います。読書においても実体験においても素人の私がこの程度くらいまでは分かるというところでも、運よく平明でよい本と出合えたと思っています。

*1:前者はスニッカーズなど想像の付きそうな顔触れで須賀、後者は「親子でのキャッチボール」なども含まれます