かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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ベストセラー『FACTFULNESS』が「説教臭くない」理由

【目次】

 

過剰にドラマチックな世界観を生む「10の思い込み」

日本をはじめとする*1世界各地でベストセラーとなった一冊です。副題の通り「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介しています。

10の思い込みとは、

  1. 分断本能(世界は分断されている)
  2. ネガティブ本能(世界はどんどん悪くなっている)
  3. 直線本能(「地球上に人があふれ出して海の先へ先へとこぼれ落ちてしまう」)
  4. 恐怖本能(危険でないことを恐ろしいと考える)
  5. 過大視本能(目の前の数字が一番重要)
  6. パターン化本能(一つの例が全てに当てはまる)
  7. 宿命本能(全てはあらかじめ決まっている)
  8. 純化本能(世界は一つの切り口で理解できる)
  9. 犯人捜し本能(誰かを責めれば物事は解決する)
  10. 焦り本能(今すぐ手を打たないと大変なことになる)

です。現実のデータを使いながら、これらの本能に囚われたドラマチック過ぎる世界の見方に修正を迫っていきます。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

こちらなど、同様の切り口の本はいくつかありま須賀、特に本書がある種の説教臭さや胡散臭さを帯びていないのは、著者がただの「データ屋」ではなく*2、身をもってそれらのデータが生まれている現場に飛び込み、著者が言うように数字だけでなく人から多くを学んだ成果として、それぞれの知見が紹介されているからなのでしょう。

私の失敗エピソード:「察し」でクイズに正解しすぎた

この本の感想を書くなら、自分がこれらの本能に支配されてしまったエピソードを書き添えてほしいー。訳者あとがきにそう書いてあったので、私もひとつだけ(小学校時代に住んでいた街の都市化の程度を「直線本能」で捉えていた、という話を八割方書いたところで、話がローカル過ぎて消してしまいました)。

それは、まさに本書のクイズでした。非常に正答率が低くなる、というところが本論に繋がってくる大事なところなので須賀、私は7〜8問正解してしまいました。なぜか?それは、私が著者らが訴えるところの「FACTFULNESS」に満ちているから…ではなく、副題などの周辺情報から、著者たちがこれから何を言おうとしているかについて、多少想像を膨らませてしまったからでした(その割には結構間違えましたけど)。まさにこれは「パターン化本能」というやつですね。クイズは多めに正解できましたけど、これをやり過ぎて判断を誤ると結構危なそうですね。一歩立ち止まって、一つでも自分の思い込みに気付く機会にしたいものです。

*1:特に日本で売れているそうです

*2:データを駆使した議論を否定する趣旨ではありません