かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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「犬くらいの寿命」だとしても…/『GAFA』(スコット・ギャロウェイ)

 

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

 

今年の流行語大賞の候補にもノミネートされたGAFA(GoogleAmazonFacebookApple)それぞれの成り立ちやビジネスモデルを読み解きつつ、「GAFA時代」とその先の世界まで論じた本です。

この本では、これら「四騎士」が人間の脳や心、(穏やかでない表現で須賀)性器に訴えることでその地位を築いていったとしています。

膨大な知を集めて検索結果を公平に示す(とされる)Googleは脳を補い、Amazonはもはや社会インフラというべき輸送網で物を欲する指と脳をつなぎます。Facebookは人間同士のつながりを求める心に訴え、Appleは「高級ブランド」として持つ人間のセックスアピールになる*1。そうしたそれぞれの方法で立場を固め、堀を築いているというのです。

「四騎士」には共通点もあるといいます。商品の差別化、ビジョンへの投資(安い資本を集める力)、世界展開、好感度(当局に目をつけられにくくなる)、垂直統合(直営店の運営)、AIの活用、勤めることがキャリアの箔付けになる、地の利(優秀な人材がいる場所に近い)、など。しかし一方で、著者はこうした企業が長く優位な立場を保つとは考えていません。高級ブランド化するAppleは比較的マシとしながらも、「寿命は犬と同じくらいだろう」と喝破しています。

著者は「四騎士」について、「少数の支配者と多数の農奴が生きる世界」を生み出した、と批判的に捉えています。ただ恐らく、著者もそう予感しているのではないかと思いましたが、彼の言う通り「四騎士」が犬並みの寿命で表舞台から姿を消したとしても、アリババなのかテスラ・モーターズなのか、あるいはまだ見ぬスタートアップ企業なのかはともかく、次の騎士達の時代になってもその傾向は続くのではないかという危惧を抱いてしまいました。大きな変革期だからこそ、技術を社会の中でどう使っていくかが重要だ、と聞いてきたはずなんですけれども…

 

個人的には、著者がNew York Timesの役員をしていた時の提案、というのに関心を持ちました。GoogleFacebookに記事への自由なアクセスを許すのではなく、各報道機関が一体となって、一番高く記事を買ってくれるところだけに記事を配信すれば状況を改善できる、というものです。

この提案は社内で採用されなかったそうで須賀、日本の状況に照らしても、コンテンツを持っている側がもっと交渉力を持ってもいいはずで*2、ちょっと嫌な言い方かもしれませんが、プラットフォーム側が競合争いをしているタイミングは本当はそのチャンスであるようにも見えます。まあ、コンテンツを出す側が一枚岩になれるかどうかが非常に大きな問題ではあるんですけども…

*1:ここはiPhoneがありふれている日本ではあまりピンとこない感じでしたね。かく言う私は、私用と出向元・出向先からの貸与で計3台のiPhoneを持ち歩いていま須賀、それが異性へのアピールになったと感じたことはありません

*2:むしろそうなっていかないとコンテンツを再生産できなくなって最悪共倒れもありうる