かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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小惑星の衝突で死ぬ確率は散歩43キロ分と同じ/『もうダメかもー死ぬ確率の統計学』(マイケル・ブラストランドなど)

 

不慮の出来事から生活習慣まで、人命に関わる様々なリスクを指標化して表現しつつ、一方でその意味するところを考える本です。2013年にイギリスの出版社から世に出され、邦訳版が話題となっているようです。

イギリスで1日を過ごし、事件や事故などの外的要因によって死亡する確率である100万分の1を「1マイクロモート」とすると、43キロの散歩と45キロのサイクリング、鉄道と民間航空機による1万2000キロの移動で死亡する確率がこの1マイクロモートに相当するそうです。スカイダイビング1回は10マイクロモート、同国での1度の出産で120マイクロモート、第二次世界大戦でイギリス空軍の爆撃機に1度乗り込むと25000マイクロモート、シエラレオネの乳児死亡率を換算すると119000マイクロモート(イギリスで不慮の死を遂げる確率の326年分!)、そして小惑星の衝突による死亡は、生涯を通じて1マイクロモート…などと著者は計算しています。

また、平均余命を30分減らすリスクを「1マイクロライフ」と定義すると、タバコ2本・ハンバーガー1個・2時間座りっぱなしで1マイクロライフを消費し、中強度の運動は最初の20分が2マイクロライフの、以後40分は1マイクロライフの「貯金」になるのだそうです。

ただ、この本を通じて著者たちが伝えたいのは、そうした数字の羅列ではありません。その数字と同じくらい、「それをどう見るか」が重要であることを何度も強調しています。これらは「知識に基づく合理的な賭けオッズにすぎない」もので、「世間でリスクと呼ばれている尺度は個人の価値観や各自のフレーミングの問題に違いない」。これがあくまで平均の話であることを踏まえた上で、どんな行動に伴うどの程度のリスクを引き受け、あるいは回避していくかは、自分が決めていくことなのだと思います。

 

イギリス人らしい、と言うのか私にはわかりませんが、ユーモアあふれる書き振りで面白く読み進められる半面、饒舌だなあという印象も強かったです。あと、邦訳のタイトルがいかりや長介みたいになっているのもちょっともったいない気がしました。

 

 

 

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