かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『何もしないほうが得な日本』(太田肇)

 

 

会社、行政、町内会、PTA、そして学校といった日本の様々な組織で「何もしないほうが得」という態度が広まっている状況について論じた本です。

ごく簡単に言うと、これらの組織で共同体の基盤が崩れつつあるにもかかわらず、「全体と個の利害対立は存在しない」といった建前論が幅を利かせた結果、水面下でフリーライド的態度が増幅したーと著者は論じています。

教育現場については、

canarykanariiya.hatenadiary.jp

PTAについては、

canarykanariiya.hatenadiary.jp

というより現場に即した議論があり、本書は会社組織を中心に分析したものと言えると思います。

一方で、著者が言う「共同体の空洞化」はかなり大きな議論のはずですので、そこをさらに押さえた論理展開があるとよいと思いました。

「何もしないほうが得」は、煎じ詰めれば社会全体におけるフリーライドの問題なのだという指摘が本書の眼目なのだと捉えています。そうであるならば、昔ながらの共同体の復興ではないにしても、ある範囲にあるレベルの紐帯の公共とでも言うべきものがあって、みんな大なり小なり共有地の牧草を食んでいるのだという認識を共有することが不可欠なのだろうとは思いました。

サクッと読める、読みやすい本です。