【目次】
真面目で素直だけど・・・
モチベーション・イノベーションの研究者である著者が、さまざまなデータや自身の教育経験を踏まえて「いい子症候群」と名付けた若者の傾向を論じた本です。
具体的には「真面目で素直だけど打たれ弱く、何を考えているか分からない」という上の世代からの評価から始まり、いずれも自身のなさに起因する「とにかく目立ちたくない」横並び意識の強さ、変化を好まず決断や挑戦を避け、守り一辺倒の内向き思考に陥っている(とする)ありようを、ジョークや愛ある皮肉を交えつつ紹介しています。一方で、若者たちがそうした傾向を持つに至った理由は「若者が育ってきた日本社会がそうだからだ」「大人がそう見せつけてきたからだ」「自分が出来もしないし、やりもしないことを、若者に押し付けるなんて搾取以外の何物でもない」と喝破してもいます。
冷静に読むには面白すぎる
本書が「近頃の若い者*1はみんなこんな調子で困ったものだ」というような雑な括りをしているわけではもちろんありません。著者自身の教育経験の中で、そうでない学生たちにも少なからず出会ってきたことが述べられていますし、上記のようにこれが「若者」だけの傾向・問題ではないことを明確に主張しています。
ただ一方で、「近頃の若い者は(ry」を典型例とする世代論や性別・(国籍や「人種」を含む)地域・(最近さすがに聞かなくなりましたが)血液型といった属性で人間を対比区分させる議論は、時に非常に強力です。「こちら側/あちら側」にハマらない人も少なからずいて、たまたまそうでなくても、その複雑な組み合わせの中で個人はまさに固有のものになり、恣意的な集団もどんどん中身は多様になっている*2のが今の社会だと思っていま須賀、そこに本書の議論が放り込まれた時、そのあたりを冷静に踏まえて読むには内容的にも筆致的にも面白すぎるのではないか。そこはちょっと心配です。
*1:そもそもそれは何歳から何歳くらいまでを指すのか?