4月に放送されたNHKスペシャルを書籍化したものです。
デジタルの世界におけるフェイクとプライバシーの問題は、特にこのコロナ禍の影響もあってよく語られるテーマになっていま須賀、それらを幅広く取材している点に価値があると思います。
印象的だったのは、どちらの問題においても「透明性」がキーワードとなっていたことです。前者については、台湾のオードリー・タンが「政府が透明性を確保し、正確な情報を発信することで、フェイクを防ぐ」と語り、後者の取り組みが進む欧州では、市民一人一人がプライバシーを巡るデジタル技術やプラットフォーマーの規約を理解し、自らのデータの主人となる方向が目指されています。
本書の表現を借りれば、スマホという「魔法の箱」は往々にしてブラックボックスにもなりがちです。そうなってしまわないための努力を事業者、利用者たる市民ともに重ねていくことは最低限必要でしょうし、現政権には望むべくもないかもしれませんが、政府が情報を隠したり、国会の場でウソをついたりしないということは、政治という文脈を超えて、広く社会に対する責任として求められていることでもあるはずです。