留守政府を預かる西郷隆盛は、江藤新平らとともに国政改革を推し進めます。しかし朝鮮国への使節派遣をめぐり帰国した岩倉具視・大久保利通らと対立することになってしまいました。
今回の話の展開は、薄味ながらお話として上手に作っていたと思います。
留守政府内の長州出身者である山県有朋・井上馨がいずれも金銭がらみのスキャンダルで辞め*1、これまで脇役的な地位に甘んじていた土佐と肥前の出身者が西郷を抱き込むような形で実権を握る。これに対し、欧米から帰ってきた木戸孝允や大久保らが巻き返しを図るー。もちろん藩閥による権力闘争だけが当時の明治政府内の行動原理ではありませんでしたが、説明の仕方としては無難であったように思います。
当時の政界において、外政を重視するか内治を優先するかという路線対立を含んだいわゆる「征韓論」自体が、政策論として重要であったことは間違いありません。ただ、まさしくそれは「征韓論」であった*2が故に、150年近く経った現在においても(むしろそうであるがこそ)、「近代日本の曙光」として放送されるNHK大河ドラマでその件を詳述するのは具合が悪かったのではないでしょうか。
穿った見方かもしれませんが、全体としてそこまで史実性を重んじてこなかった今作で、敢えてデリケートな政策論争を描こうとするより、その背後にある権力闘争に原因を求める方が格段に無難だったろうと感じました。これは古今東西の政治を分析する上で、難しい部分でもあるのだと思います。
しかし帰国した大久保卿の演技は迫力がありましたね。ネットでは「ダークサイドに堕ちた」なんて反響もあるようで須賀、何かをきっかけに(場合によってはそのきっかけすらなく)キャラが急変した、と見做されるのは、そこに至るまでの機微を筋書きとしてしっかり説明できていなかった、ということでもあります。