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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『ネット炎上の研究』(田中辰雄、山口真一)

 

ネット炎上の研究

ネット炎上の研究

 

ネット上での「炎上」現象について、事例紹介や分類、アンケートに基づく参加者の分析、それらを踏まえた対策の検討などを行った本です。

炎上の事例紹介や対策について触れている本はいくつかあるようで須賀、この本のユニークさは、アンケート調査やいくつかの炎上事例の分析に基づいて、炎上に参加する人のボリュームや属性を推定していることでしょう。その分析結果によると、炎上参加者(一言でも書き込む人)はインターネットユーザーの0.5%程度であり、炎上している対象を直接攻撃するような人は0.01%未満のレベルなのだそうです*1

著者らの提示する解決策についての議論は(失礼ながら)ここでは割愛してしまいま須賀、この本を通じての彼らの問題意識は「炎上によって社会全体で情報発信が萎縮してしまうのは望ましくない」というものでした。私も現在のネットニュースの仕事の中で、企業や著名人など第三者の炎上を扱うこともありますし、「自分たちが炎上しないように気をつけよう」という注意喚起がなされることもあります。報道記事を扱っている以上、「炎上しそうなテーマを避ける」ようなあり方ではあってはならないと思うわけで須賀、炎上問題に関し「相手を知る」上で、このような分析は貴重だと感じました。

ただその一方、ボリュームとしてかなり小さい「炎上させている人」が、社会的に見て「特異な人」である、という言い方はあまり感心しませんでした。「炎上はごく少数の特異な人の仕業だ」とすることで、社会的な炎上に対する萎縮を解きほぐそうとする意図はよく理解しているので須賀、著者らも認める通り、ボリュームが小さい集団の属性について、一般化して言及するのは難しいことのはずです。

もっと言うと、要するに著者らは「ちょっとだけ異常な奴がいるけど放っておけ」と言っているわけで、悪質な煽り行為を礼賛するつもりはありませんが、分断して排除するような扱いはインターネットの、さらには自由主義の精神に悖るような気がします。それこそまさに、「炎上」してしまいそうです。

 

いつもありがとうございます。

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*1:「炎上させている人」の数は実は少ない、というのは界隈の人の中では言われていることでもあるそうです