- 作者: 瀬木比呂志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/02/19
- メディア: 新書
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人事の仕組みがどうなっているとか、過去にこんなひどい話があったとか、あの人は明らかに職責に能力が伴っていない*1だとか、そういう話は個人的には非常に興味深く読んだので須賀、残念ながら、判例などを交えて比較的体系だった批判を展開している第4章以外は、暴露本の域を出ないと言わざるを得ないと思います。
これを言ったら身も蓋もないかもしれませんが、この本を読む限り、スノッブというべきかペダンというべきか、率直に言ってこの著者にはあまり好感を持つことができませんでした。「裁判官の精神構造の病理」と題打って類型化しながら批判してはいるけれども、著者自身が結構あてはまっているのではないかと私には思えますし、はたまた「自分は学者向きだ」と言ってはいるものの、もし彼がストレートにアカデミズムの世界に入っていたならば、かなりの高確率で『絶望の大学』なる本をものしていただろうことは想像するに難くありません。そんなわけでどうにも、彼の書く内容からバランス感覚を感じられなくて、その点がこの本全体を必要以上に暴露本っぽく見せてしまっているというか、厳しく言えば品位を貶めているように思います。
久々に結構辛口なことを書いてしまっていま須賀、これは総じて「この人なんかちょっとヤな感じだ」と言っているだけで、ここで展開されている彼の批判が無意味だと言っているわけではありません。裁判所内でも反響は大きく、「あながち外れてはいない」との評価もあるようですし、例えば違憲審査に関する統治行為論について「司法官僚による事なかれ主義の発露だ」と言われて有効な反論ができるでしょうか?
素晴らしいとは思わないけれど、三権の中で最も知られていない権力の内側を語る、黙殺してはいけない一冊でしょう。