かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『戦争の条件』(藤原帰一)

戦争の条件 (集英社新書)

戦争の条件 (集英社新書)

どのような時に戦争を避け、あるいはどんな状況下ではその手段に踏み切るべきか―。民主化と平和、権力移行論、領土・歴史問題、ナショナリズムなど、さまざまなテーマに即しながら「読者はどう考えるか」を問う国際政治の入門書です。国際政治史の知識を開陳するのではなく、理論を滔々と紹介するわけでもなく、あくまでも考える(もっと悩ませる)材料としてそれらが登場する構成で、敷居高くなくその悩ましさに触れることができます。
その中で一つ思ったのは、ちらっと挙げた権力移行論の敷衍可能性についてです。この議論そのものは「国際政治における権力移行期には、台頭する新大国が旧大国に挑む覇権戦争が起こる」というもので、著者はざっくり言えば「台頭する新大国は、旧大国を上回るまで戦争を避けるのが合理的で、その逆も然りなので成り立たないよね」と一蹴しているので須賀、「勝てると思う」ことと「実際に勝てる」ことは別なわけで、その辺の自己・相手認識を噛ませていけばかなり面白い議論になるのではないかと思うのです。旧大国が叩けるうちにと新大国に戦争を仕掛けたんだけど、実はもう軍事力では追い越されていて…という方が、むしろ史実においてありがちな気もします。
現在の東アジアあるいは環太平洋地域をめぐる状況も、そうした認識論を含めた権力移行論を検討する上での好例とはなりそうで須賀、これらの知見も既にあるわけですし、この情勢をどうハンドリングするかが、いま、ここで生きる私たちの知恵の見せ所とも言えるでしょう。