叢書「東アジアの近現代史」 第4巻 ナショナリズムから見た韓国・北朝鮮近現代史
- 作者: 木宮正史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/02/16
- メディア: Kindle版
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戦後を中心とした日本と朝鮮半島の関係について、2冊読んでみました。
実はどちらも概説的な本でした。前者は、政治と経済と市民という三つの次元で日韓関係を追っています。それぞれの同盟国である米国によって取り持たれていた関係から、両国の政府の「癒着」を経て、各次元で結びつきを強めた両国関係を東アジア地域の安定に役立てようという構想にまで達しながらも、国際政治力学の変化(中国の台頭)や世論同士の反目によって一転対立を深めたこともあって、現在はお互いに相手への関心そのものが低くなっているーという流れを整理して提示してくれます。
この本の最後に指摘されるような「旧宗主国ー旧植民地」関係という側面だけでなく、国際政治の構造が二国間関係に及ぼす影響や、いわゆる「2レベルゲーム」の発生と展開について検討する上で、日韓という特定の国同士の関係を超えた意義を示してくれています。
後者は、南北朝鮮の近現代史にナショナリズムをまぶした本、と言った方が実態に近いかもしれません。ポスト冷戦期に経済力と自信をつけた韓国が、国際社会において相応の責任を果たすことと、相応の発言力を持つことという一見相反した方向性を志向する「中堅国ナショナリズム」という議論は興味深かったで須賀、総じて体制正統化のロジックのような「上からのナショナリズム」の議論が多く、正直ナショナリズム論を援用しなくても政治学的に説明できてしまう話が多かったように思います。日本から北朝鮮へのいわゆる帰国事業あたりを内在的に深掘りしていれば、もう少しナショナリズム論っぽくなったのかもしれません。とはいえ、政治史の本としてはこちらも整理されていて分かりやすいと思いましたがm9
いつもありがとうございます。