かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『共産党宣言』(マルクス・エンゲルス)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルスが打ち立てた共産主義の古典中の古典です。彼らの主張の主眼自体は随所でご案内でもあり、言ってしまえばこの場で驚きをもって紹介するようなモチベーションはあまりないので須賀、むしろウェーバーの「脱魔術化」やゲルナーナショナリズム論、サルトルを「粉砕した」とされるレヴィ・ストロースの議論など、『共産党宣言』以後のさまざまな学問・思想的成果の基本コンセプトを見出すことができることに深い感銘を覚えました。それはもちろん、マルクス・エンゲルスの思想的インパクトの大きさの証左と言えるのでしょう。
2人は「ブルジョア階級」の批判者に対し、「諸君の思想そのものが、ブルジョア的生産諸関係および所有諸関係の産物なのだから」、「諸君のブルジョア的観念を尺度にして…われわれと争うのはやめたまえ」と述べています。要は、「自分の物の見方だけで全てを断じるなよ」ということで、まさにレヴィ・ストロースサルトルに向けた批判はそのような種類のものであり、それがある種のパラダイム・シフトを印象付けたようです。その一方で、プロレタリア階級が革命で支配階級になれば「階級としての自分自身の支配を廃止する」であるとか、プロレタリア階級がブルジョア階級から「自分を解放しうるためには、同時に全世界を永久に搾取、圧迫、および階級闘争から解放しなければならないという段階に達した」と言うように、まさに2人は、そうした階級や階級闘争を永遠に消し去る言わば「革命の封印」*1として共産主義革命を位置づけているようにも見えます。
この2人の知的影響下を完全に抜け出ることは前述のように考えていくと想像しにくいで須賀、革命を経験した個別の国家の辿った命運はともかくとしても、「革命は不可避で、それが最後である」といった見方に頷く人はなかなかいなくなってきているだろうという点において、この時代に生きる私たちも、さらなるパラダイム・シフトを経験した/ていると言えるのでしょう。

*1:その意味では、ムハンマドを最後の預言者とする(「予言者の封印」)イスラームの教義とも通じています。まあ、ヘーゲルの影響なので生姜