休み中の一つの挑戦の意味を込めて、読んでみました。この本を的確に紹介ないし解説する自信はあまりないので、以下、読んだ感想として述べます。
先に新書を読んだことが、良くも悪くも『野生の思考』の読み方に大きな影響を与えてしまった気がします。
新書『レヴィ=ストロース入門』は非常によく整理されており、レヴィ=ストロースの人生から主な著書の内容、反響や批判とそれらへの応答までが、違和感なく盛り込まれています。彼が他者の理性に自己を開くことによって、人間の理性を拡大しようとしたこと、いわゆる体系とは異なる構造の意味、などなどを平易に解説してくれています。本当に勉強になりましたし、今後も参照する本になると、今から感じています。
その一方で、新書の説明の「見通しが良すぎた」がために、レヴィ=ストロース本人の主著たる『野生の思考』の議論がやや迂遠に見えてしまったのも事実です。訳者あとがきの解説によると「レヴィ=ストロースの著作の中でも格別に難解なものとして知られている」そうで須賀それにしても、トーテミズムと食物禁忌やカーストとの関係、命名をめぐる慣習といった様々な興味深い論点を豊富な事例とともに語りつつ、「野蛮人の思考」とみなされてきたものの普遍性を示し、その復権の道を切り開くーという道筋を、這ってでも「リアルタイム」で追えなかった感覚は残りました。どうしても結論めいた部分がチラついてしまったのですね。
これはもちろん新書のせいではありません。訳者がまたまた言うには、この本の読解にはレヴィ=ストロースの他の著書や当時の学問・思想状況の理解が不可欠だとのことです。歴史的とも言うべきサルトル批判の箇所などはまさにそうでしょう。であれば、やはり私にとって、事前に新書の内容を理解することは必要だったはずです。この優れた入門書のおかげで、ようやく読み通せたということなのだと思っています。
なんだか読んでいてしんどい本だったような書きぶりになってしまいましたが、上述したような諸論点など、話の内容についても手法についても、楽しめる部分が結構ありました。性交と食行為の深い類推関係、という指摘は以前読んだ『性食考』そのものですし*1、有名な話ではありま須賀、タイトルと表紙絵のパンジーとの関係もただのダジャレではなく、実に意味深長なもので感心させられました。
*1:もちろんこっちが先でしょうけど