現場を離れて久しい新聞記者のブログ。 読んだ本の紹介や旅行記(北朝鮮竹島イランなど)が中心です。 

人の口に戸は立てられぬ/『北朝鮮建国神話の崩壊』(金賛汀)

朝鮮人民革命軍を率いて抗日ゲリラ戦を闘い抜き、ソ連軍と協力して朝鮮に凱旋したはずの金日成が、実は中国共産党員だった上に、ソ連の対日宣戦布告後も一切戦闘行為は行わず、ソ連の軍服と大尉の階級章をつけてこっそり元山に上陸していた。金正日も聖山・白頭山の密営ではなくロシア沿海州の宇和なにをする(ry
…ということをかつての戦友たちへのインタビューなどを通じて暴き出した話です。
冷戦終結と前後して、朝鮮民主主義人民共和国の建国に深い関わりを持つ中ソの史料や証言が活用できるようになってきた結果、「金王朝」による支配に正統性を与えていた「神話」の虚構が暴かれていくさまが描かれています。金日成による抗日パルチザン活動を「国造り神話」とすることは、反日共産主義をレゾンデートルに置い北朝鮮にとっては避けられない帰結であるようにも見えま須賀、本当に「伝統の創造」ならぬ「伝説の創造」を国家的に実行してしまったわけで、これまた必然的な帰結として「人の口に戸は立てられぬ」ということわざが示すような事態が起こってくるということなのでしょう。
とはいえ金日成抗日パルチザンとして一定の戦果を上げていたことはおそらく事実であり、また規模は小さくとも、ソ連から帰国するパルチザンたちのリーダー格だったというのも本当のようです。だったら事実は事実のまま歴史に刻んでもそこまで問題はなかったんじゃなかろうか、なんて甘いことを思った半面、「勝てば官軍」で勝者が歴史を書いていくというのは大なり小なり、普遍的なことでもあるのだろうなあとも感じました。
ちなみにこの本は、雑な言い方をすれば「北朝鮮が好きな人」以外にはちょっとおすすめしかねます(笑)