- 作者: 今村仁司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/05/01
- メディア: 新書
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一般的に「マルクス主義」と言うと、ソ連や中国の共産主義政権を思い浮かべるのが当たり前で、良くも悪くも、いや、現在においてはほぼ悪い文脈において、それらの国*1の政治的成り行きがマルクスの思想の結実であると捉えられることもしばしばであるように思います。つまり、共産圏の崩壊によってマルクスの思想の非妥当性が明らかになった、という考え方です。
しかし、本当にそうなのか。「マルクス・レーニン主義」という言い方もありま須賀、マルクスの思想に影響を受けた(と称する)革命家たちが「マルクスの解釈権をいわば独占してきた」のではないか。そうした政治家たちの手垢にまみれた「マルクス主義」ではなく、マルクス本人が考え、多くの社会科学者に影響を与えた「マルクス」主義について見ていこう、そんな本です。
内容としては、序章でこれまでの議論と関連するようなさまざまなマルクス思想の捉え方を紹介したのち、ギリシャ哲学やルソー、特にヘーゲルといった思想との関連の中で、「マルクスは何を訴えたか」というよりは、「マルクスはどんな考え方をしたか」という観点から話が進んでいきます。一番分かりやすい例を出せば、この本では『資本論』の具体的内容については詳述されません。むしろその根底にある「マルクス」主義を探る方向性が強いですので、私のようにズルして入門書だけ読んで諸著作の内容を大掴みしてしまおうというよりは、本当にマルクスの思想に体当たりで取り組んでいこうという際の、理解の補助線のように捉えるのが、本書のより妥当な使い方なのではないかと思います。