かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『「中国共産党」論―習近平の野望と民主化のシナリオ』(天児慧)

中国が今まさに置かれている状況について、国内情勢を中心に著名な中国研究者がまとめた本です。(1)共産党中枢は「太子党」「共青団」といった派閥だけに還元できない複雑な人間関係でも動いている、(2)中国の政治社会は三つの大規模性(人口、領土、思想)と四つの断層性(都市―農村、エリート―大衆、関係―制度、政治―社会)で理解でき、また(3)権威主義といっても地方毎にかなり多様である(「カスケード型権威主義」)など、独自の枠組みや知見に基づいて論じられています。
よく知られる「三つの代表」など、共産党がいわゆる資本家のような人たちを包摂する流れについて私が最初に知ったとき、「プロレタリアート独裁の『プロレタリアート』の部分を取ったらただの独裁じゃないか」と嗤ったのをよく憶えていま須賀、この本の著者はその過程を「共産主義イデオロギー愛国主義に置き換える換骨奪胎」「溶けるように変化する『溶変』」などと、(無批判に、というわけではないで生姜)ある種の変化のエネルギーとして肯定的にも捉えているように感じられました。それが最後の「中国民主化」に向けた展望にもつながってくるので須賀、直前まで論じてきた「難しいかじ取りを迫られている習政権」的なトーンとかなり落差が大きくて、ここだけかなり唐突というか、突然夢を語り始めたような印象を受けてしまいました。
いずれにせよ、かなりの「ナマモノ」を扱った新書ですので、正月休みぐらいまでのうちに読むか、それとも読まないかという判断が妥当なのかなと思います。あと人物索引は必要な本だったと思います。