お笑い創価学会 信じる者は救われない―池田大作って、そんなにエライ? (知恵の森文庫)
- 作者: 佐高信,テリー伊藤
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2002/09/01
- メディア: 文庫
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この本に限らず、創価学会に対して批判的な言説は大きく分けて二通りあるようです。まず一つは「創価学会(あるいは池田大作)ってこんなメチャクチャなことをやってるんだぜ」という、宗教団体としての学会に対する批判です。この本でもオウムなどの宗教やどこぞの国家などと比べて揶揄されていま須賀、ここ書いてある内容を読む限り、確かに私の感覚からして奇怪だなあという印象は大いに受けますし、特に批判者*1に対する対応には嫌悪感を覚えます。指摘されているように、教義では欲望を肯定しながら、内部の学会員は組織の維持拡大のため経済的、物理的献身を求められるというのは、皮肉というか、ある種欺瞞的とも言えるでしょう。
ただ、特に内部的な奇怪さ関しては「それでも私は学会を信じているのです」と言われてしまえば、私としても「そうですか、どうぞどうぞ」と言わざるを得ませんし、そう言うことに躊躇もありません。私自身は特定の信仰を持っていません*2が、キリスト教であれ仏教であれイスラームであれ創価学会であれ幸福の科学であれオウム真理教であれパナウェーブであれ、個人が何かを信仰することについて干渉する意図は一切ありません。例えば麻原彰晃を崇拝することと地下鉄にサリンを撒くことは別の問題で、実行犯が非難されるのはサリンを撒いたからであって、オウムの信者だからではないというのが基本的な考え方です。
その一方で、より私の興味をそそるのは二つ目の批判です。「宗教団体が政治を牛耳っていいのか」。いわゆる「創価学会と公明党は癒着している」ことを根拠とする「政教一致」批判なので須賀、この本を含め「政教分離」という言葉が、日本国憲法上の意味と異なる形で用いられているケースがままあるのも気になるところでして、さっくりと一言。憲法に書かれた政教分離というのは、基本的には国家権力が特定の宗教を後押しすることで、他宗教の信者の信教の自由を圧迫してはならない、という、戦前の国家神道に対する反省に由来する規定です。宗教団体の「政治上の権力」行使の禁止も定められていま須賀、これは国が独占すべき統治的権力を意味しており、宗教団体が政治活動をすることを禁じているわけではない(それは宗教団体の政治活動の自由を阻害することになる)というのが通説*3、なんだそうです(笑) つまり通説によれば、公明党の存在自体は違憲ではないということになります。ただ現実的には、宗教法人として課税の対象となっていない創価学会の施設で公明党の政治活動が行われている、という指摘があり、これは憲法上の政教分離というよりは宗教法人に対する税制上の優遇措置の趣旨に反するという意味で、問題があると思います。
政教分離の話が長くなってしまいましたが、私の関心はやはり日本の民主主義との関係です。例えば今回の統一地方選において、公明票の動向が持つ意味は大きくなるでしょう。なぜなら、震災を受けた「政治休戦」ムードが、投票率を押し下げることが予想されるからです。投票に行く人が減れば、必ず投票に行き、特定候補に投票する人の動きは重要性を増します。久米宏の「投票に行かないと、自民党が勝っちゃいますよ?」と同じ理屈です。
特定の宗教の信者がほぼ無条件に、組織的に特定の政党に投票する。そしてそのボリュームが選挙結果に大きな影響を及ぼす。それが、討議を前提とするはずの民主主義にとって好ましいのかという批判は妥当なものだと思いますし、この本にあるような状況を見れば、彼らはその批判を受けるに値すると思います。加えてそのようなイメージが、特定の投票行動をとる組織に属しない人々のアパシーを増長させているのも事実でしょう。
でもそれって、全て公明党の支持者が悪いのでしょうか? 全て創価学会が悪いのでしょうか? 私はそうまでは思いません。私は公明党の支持者には、党が自公政権時代にどんな法案に賛成してきたか、本当にちゃんと見ているのかという疑問を率直に言って持っています。この本を読むと、本当にその人の信念や党の政策を見て、他の選択肢と比較していますか?と聞きたくもなります。だけども、問題は、
…若干というかそれなりに論旨が逸れてしまったので最後に一言。この本では、第一章の冒頭から「いかに池田大作は可笑しいか」というようなことを2人が述べあっています。これは、もともと創価学会や池田大作が嫌いで、この本を読んで憂さ晴らしをしたいという人にはたまらない展開なのかもしれませんが、自分の持つ先入観はとりあえずちょっと置いておいて、学会について冷静に考えていく材料が欲しいという動機で読み始める人にとってはいささか不親切というか、思わず「いきなりなんでそんな話になるの?」と突っ込みたくなるような構成です。冷静さのかけらもないこの私が言うほどですから(笑)、慎重な読者の皆さんはよりそういう印象を持つのではないでしょうか。小田実を含めて、引用されている文章は興味深いものが多いんですけどね。