かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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川端康成は絶対領域の先駆者? 〜『みずうみ』(川端康成)

みずうみ (新潮文庫)

みずうみ (新潮文庫)

桃井銀平という男性のコンプレックスや女性への情念を、現在進行形の出来事の中に回想を交えながら描いた本です。魅かれた女性の後をつけるといった銀平の行動から、「変態川端の面目躍如」みたいな賛辞(?)もあちこちで聞かれる作品なので須賀、私はむしろ程度や具体的対象の差こそあれ、誰にでもある意識のありようを、乱暴に言えばやや誇張して描いているように感じながら読み進めていました。作中で何度も言及される「自分の足の形が醜い」ことへのコンプレックスと、「女性の後をつける」癖を、銀平自身がなんとなく関係のあるものと捉えていたりする部分というのは、人のコンプレックスというもののある側面をぬらっと触っていくような感覚を与えます。同時に、もしかしたら触られたのは、私自身が(意識化しているかどうかに関わらず)持つコンプレックスなのかもしれません。
また、進行する「現在」の合間合間に挟まれる銀平の回想が、上に述べたようなコンプレックスや自身の来歴をごくごく自然に語っていて*1、作品の構成としては読み終わってみると感心させられます。登場人物たちが微妙にリンクしているのが気味悪いんですけれども。
全般的にはよくわからなかったです。
ちなみに作中で、少女の長ズボンと靴の間に見える白い肌に、銀平が自分が死んで少女を殺したいほどの「かなしみ」を覚える*2、というシーンが出てくるので須賀、これは今で言うところの「絶対領域*3萌えの、かなり先駆的な事例*4と見ることができるでしょうか。

*1:物語としても銀平の意識の流れとしても

*2:「…からだけでも」と言っているので、銀平がこの部分にだけ魅かれたと言うと嘘になることは付記します

*3:指す部位は違いますけれども

*4:連載開始が1954年