かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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【ネタバレあり】「愛の不時着」、リアル北朝鮮との異同は?/注目はラストの「好着地」

娘の昼寝の合間に見ていた「愛の不時着」。今日、合計の視聴時間にして22時間超の長旅を終えました。

www.netflix.com

以下、ネタバレも含んでしまいま須賀、少しずつ感想を述べます。

 

【目次】

 

「愛の不時着」一周して感じた北朝鮮や韓国ドラマのこと

ドラマが描く北朝鮮

初回から律動体操が出てきたのには思わず吹き出してしまいましたとか、「軍事部長」なる肩書はさすがにないんじゃないの?とか、(一応、北朝鮮渡航経験のある)私個人としても感じたことはいくつかありま須賀、考証的な部分については専門家や当事者の見解を求めるのがよいと思います。

bunshun.jp

sportsseoulweb.jp

ちなみに実際の北朝鮮当局は、「最近南朝鮮当局と映画製作会社が虚偽と捏造に満ちた荒唐無稽で不純極まりない反共和国映画やテレビドラマを流し、謀略宣伝に積極的に乗り出している」、「嘆くべき民族分裂の悲劇を金儲けの手段として使っている」などとかなりお怒りの様子。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

この本にもあるように、チョ・チョルガンが手を染めていた文化財盗難・密輸(未遂)などは実際に起こったこともあるそうで須賀、さすがにここまでの「内部腐敗ぶり」を晒されて黙っているわけにはいかないということなのでしょう。作中でリ・ジョンヒョクの部下がそうしていたように、このドラマを北朝鮮の人々が目にすることになろうことも、もちろん想定しているはずです。

 

さてさて、ここからは、ストーリーや構成について挙げていきましょう。

「高貴な出自を隠している」パターン

ジョンヒョクは総政治局長の息子であることを隠して勤務していましたが、貴種流離譚、とまでは言わないまでも、このパターンは「太王四神記」にもありましたし、日本の物語にもよくありますよね。「愛の不時着」で言えば、ジョンヒョクは結局、肝心なところで権力者である父に助けられていましたが、このお父さん、何を考えているのかイマイチ掴めない人ではありました。

「二人は既に出会っていた」パターン

実は初対面ではなく、運命的な再会だったと感じさせる構成は、「冬のソナタ」とも共通しています*1

冬ソナとの類似点で言えば、(こちらにもチェジウが出てくるというのは置いておいて)ユン・セリ&ジョンヒョクの主役カップルに絡むク・スンジュンとソ・ダンが悩みを語りながら酒を飲み過ぎるシーンは、キム・サンヒョクとオ・チェリンを思い出しました。

怒涛のスペクタクルと伏線

主人公達が絶体絶命のピンチに陥ったところで放送回が終わるケースが多かったですね。後半は慣れもあってか自然に見られましたが、最初の方は(16回あるのが分かっていたということもあり)「どうせこれでは帰れないんだろうな」と何度か思ってしまいました。

また、登場人物の会話内容を視聴者にわざと見せず、後からその内容を明かす演出も非常に目立ちました。毎回本編?が終わった後に「種明かし」がされるという構成も(本作の独自性なのか韓国ドラマ全般の傾向なのかは分かりませんが)特徴的だなと感じました。

腑に落ちなかった幕開けと最後の好着地

ストーリーの本筋について少しだけ。そもそもの話になってしまいま須賀、最初にジョンヒョク達がルール通りに対応してさえいれば、こんな悲劇は起こらなかったのに…と何度も思ってしまいました。その割には、ジョンヒョクが語った理由がちょっと薄弱過ぎるんですよね。ここについてはもう少し、感情移入できるような筋書きが欲しかったです。

一方のラストは素敵だと思いました。主人公2人がお互いの立場や日常を、そして100点満点ではないとはいえ、愛する恋人との関係をも捨てないで済む解決策を見出せたと言ってよいのではないでしょうか。韓国ドラマとしてセリが北朝鮮に亡命するわけにはいかなかったで生姜、ジョンヒョクを脱北させてしまった方が筋書きとしては簡単だったはずです。結果としてそうならなかった、そうしなかった2人の関係は、決して「不時着」ではなく、最高の地点に着地できたのだと思います。

ブームの担い手に関する一考察

最後にひとつだけ。本作の登場人物の中では、不敵な笑みがリアルなチョルガンと、一連の騒動で恋愛運のなさを露呈したダンが特に印象に残りました。

それぞれの役者さんについても少し調べてみたのですが、ダンを演じた女優ソ・ジヘについて検索すると、関連ワードで「浅野温子」と出てきたんですね。私は初見から武井咲に似てるなと思っていて、そもそも浅野温子と言われても顔が浮かばなかったりするので須賀、多くの日本の視聴者が「ソジヘ 浅野温子」と検索しているらしいということは、いわゆる「W浅野」のドラマを見ていた人たちが、「愛の不時着」ブームの担い手の一部を構成していることを意味するのでしょう。

「1放送回で映画1本分」(妻談)というヘビーな視聴体験でしたが、これを見るためにNetflixと契約した価値はあったと思います。ちょうど1カ月が近づいてきたので、Netflixについては解約するつもりです。

*1:偉そうに論じていま須賀、通しで見たことがある韓国ドラマはこの2つくらいです