かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

大学院で博士を取った人達が定職につけずに、食いつなぐのに精一杯の暮らしをしている現状を告発する本です。彼曰く、文科省と東大法学部が少子化による自らのパイの減少を食い止めるために採った「大学院重点化」によって大量の博士が生み出され、しかしそもそも専任教員の枠が増えるわけではないので、学閥を持たない「二流」「三流」と呼ばれる大学院の博士たちが職にあぶれていく、のだそうです。この本に書いてある内容から「東大法学部の陰謀」を立証するのはかなり無理があるでしょうし、正直勘弁してくれって話なんで須賀(笑)、養成された研究者の社会的な受け皿が圧倒的に不足している現状の告発、という意味では意義高い指摘だと思います。民間での調査研究とか、そういうセクターがもっと充実してくれば現状も改善される、というか、そうなるところまでが「大学院重点化」の射程であるべきなんじゃないかと思うんですけどね。
そう言えば、著者が自説を展開する際、同時期に出版されて話題になった新書をいくつか引用しているのは印象的でした。一つの切り口で書け、読む側もサクッと読める。ただもちろん書籍である以上のクオリティは担保されている、と社会的に認知されてもいる*1。新書のメディア特性が社会的な告発のハードルを下げることになるのでしょうか。

*1:ここがインターネットと一線を画す部分でもありましょう