かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫)

働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫)

カナリヤ「この本どうだった?」
かなり嫌「なんか、つかみどころがなかったね。『人生は理不尽だ』というのが議論の大前提なんだけどさ、それが間違っているとは思わないんだけどピンと来なくて」
カナリヤ「でも例えばさ、今問題と言われている格差社会って、まさに人生の理不尽さを象徴してるんじゃない?」
かなり嫌「そうかもしれない。でも、一回最後まで生き終えてみないと人生が理不尽かどうかってわかんない気がするんだよね」
カナリヤ「塞翁が馬、って言いたいの? 著者はそれすらない、っていう理不尽さを言ってたんじゃないのかい?」
かなり嫌「うん、だからその前提を否定はしないんだけどさ。まだまだ正しいかもわかんないというのが実感かな。著者は『いきなりこの世に生まれさせられて、すぐ死んでいく』ことが最大の理不尽だって言ってるけど、やっぱりこういうことって、絶対数としてある程度の人生経験がないと心の底からは言えないし、分からないことなんじゃないかな。あと、読んでいると『読者を思索の深みにひきずりこもうとする哲学者の陰謀』を感じるんだよね」
カナリヤ「なにそれ、斎藤美奈子の解説の引用?」
かなり嫌「そうそう。仕事を通じてそれぞれの人生における価値を追求しなさいと言いながら、結局哲学することを称揚してない?」
カナリヤ「でもそれこそ解説にあるみたいに、仕事っていうのは社会と個人の接点にあるわけでしょう? それをあくまでも個人の側から、『自分がよりよく生きるためにはどうすればいいか』を追求するのがこの本での立論のしかたなんだから、それはある程度必然的なことのような気がするけど」
かなり嫌「なるほどね。『理不尽な社会をこう変えるべきだ』ではなくて、『理不尽な社会の中で自分はこう生き、こう働くべきだ』ってことか。そう考えればある種、格差社会論的な読み方もできるってことかなあ」
カナリヤ「そこまで言えるかはちょっと怪しいけどねw そう言えば君はいつも『僕には勤労意欲がない』って吹聴して回っているけど、そういう意味で参考になったかい?」
かなり嫌「そうだなあ…。哲学とはやや離れるけど、いくつかの意味で自分を相対化して見られたかもしれない。それは、世の中でなにがしかの評価を受けるというのはそんなに簡単じゃないだろうということでもあるし、意外と自分はしっかり社会に馴染めているじゃないかということでもあるww」
カナリヤ「著者の生き方も面白かったよね」
かなり嫌「まあ生きていく方法はいろいろあるってことも分かったねw」
カナリヤ「でもまあ、この本はその意味では極めて『現実的な話』かもしれないけど、決して『現状追認の話』ではないってのは注意しなきゃダメだよ」
かなり嫌「それはそうだよね」
カナリヤ「てかなんで今回のレビューはこんな形式にしたの?」
かなり嫌「この本自体がこんな感じなんだよね。著者が4人の迷える参加者に語りかける、みたいな」
カナリヤ「なんかソクラテスみたいだね」
かなり嫌「初めは『なにソクラテス気取ってやがるんだ』って思ったけど、自分でやってみると意外と面白いよ。思考の足跡も整理されてよく見えるし、発展性もある気がする。まぁ、この文章よりは産婆術的というか、語りかける側と受ける側の立場がはっきりしてるんだけどね。この会話が、君の思索の整理になれば嬉しいよ」
カナリヤ「いや、立場逆だからwwww」