かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

2007年に生まれた日本人の半分は、107歳以上生きる可能性が高いー。現実化した「100年ライフ」がどのようなものになりそうか、それぞれがどんなことを意識して生きていけば長寿を恩恵として享受できそうか、などについて論じた本です。
最大の眼目は、教育→労働→引退という産業革命後に形成された人生の3ステージが崩れていくだろう、という点です。著者たちはこの本の序盤で、100年ないしそれに近い人生を3ステージで生きる場合、引退後の資金を確保するために何歳まで働かねばならないかについてかなり衝撃的な試算を弾き出します。そしてそうした各人の経済的必要性のみならず、AIなどの技術の急速な進歩に鑑みても、下手したら60年近くも同じペースで働き続ける未来は現実的ではない*1ことなどを踏まえ、転職や再教育、起業、ポートフォリオ的な働き方、人生の探索期間などを不断に選択しうるマルチステージの人生を送る人が増えていくと予測するのです。
印象的だったのは、余暇の時間の使い方に関する「レクリエーションからリ・クリエーション(再創造)へ」という言葉でした。長い人生の中でのキャリアチェンジに備え、「変身資産」を蓄えるために、余暇は自らの再創造に使うべきだー。なんかとてもわかる気がしました。具体的な計画は何もないということは一応断っておきま須賀、最近多少、外国語に触っているのもそういうイメージはありますし、そういう意図で開く本もあります。大卒後に新聞社に入ったのにも、自分がどんなことに興味を持てるのか試してみたい、という探索的な動機もありましたし、この本の登場人物が実践していたように、(これまた具体的な計画はありませんが)細君と「時期と場合にによっては、どちらかが稼いでいればいいよね」とのコンセンサスもある…と解釈しています。要するに、この本で言っていることについて、感覚的に分かる部分は結構あるんですよね。ただ、じゃあそれを具体的な形で実践するのかといえばそうでもない。それは環境なのか意思なのか能力なのか、そこを見つめろというのが本書のメッセージでもあるのでしょう。
しかし2014年生まれの長男は、半分よりも高い確率で2112年を迎えられるんですね。母親の大好きなドラえもんと会えるのでしょうか、というのはともかく、そう考えると国や自治体の制度設計というのは、本当はこのくらいの目線が必要な気がします。勝手な議論かもしれませんが、幼い我が子が生涯で経験するだろうことは、自分にとってもリアルな問題であるように思えるので。
インスピレーション云々以上に、人生の短からざる期間をともにする人とは、読んだ感想を話し合いたい一冊ではあります。以上、酒気帯びで書いた感想です。

*1:そもそもアップデートなしに60年間通用する仕事のスキルなどそうそうない