かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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ゼミで発表した本です。「小国意識」から朝鮮/韓国ナショナリズムの諸相を説明し、その近代化との関係を考察することを試みている…んで須賀、まぁなんと言うか。
まず第Ⅱ部はナショナリズムの形成と小国意識との相克を、李完用や李承晩などの政治家・運動家の個人的な体験や思想遍歴から述べていく形式なので須賀これはどうなんですかね。確かに李承晩がその相克を克服する主張を持つに至った経緯はわかるんで須賀、ナショナリズムの分析ってこれだけなのかというとそれは明らかに違うでしょう。ナショナリズムの公定力、みたいなものを考慮するにしても、いや考慮するからこそ、それがどのように受容され共有されるようになったのかならないのかについての考察は必要不可欠のように思えるのです。まぁごく乱暴に言うなら、安倍晋三小林よしのりの思想遍歴を知っても日本のナショナリズムの現状を語ったことにはならないだろ、ってことですね。これでは上滑りで観念的といわれても仕方がない気がします。
あと初めのところで、非国家的アクターの台頭をもって「ウェストファリア体制の終焉」を叫んでらっしゃるので須賀これもまた早計と言わざるを得ないでしょう。ウェストファリア体制の柱である「主権国家の絶対的優位」と「主権国家間の対等」の、前者のみについていささか印象論的な議論があるだけでこの結論を持ってくるのはさすがに無茶です。もう一つこれは発表後のコメントで聞いた話なんで須賀、特に第Ⅰ部は今までの朝鮮近代史の先行研究を無批判に切り貼りしただけ、という印象を持った方もいるそうです。
…なんか文句ばかりになってしまいましたが、前半=学説史、後半=ナショナリズム言説史or伝記風読み物、として読めば面白いっちゃ面白いですよ。勉強にもなったし。ただこいつが政治学者とは(ry