- 作者: 半藤一利
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2004/02/11
- メディア: 単行本
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昭和史を語る上で著者は、昭和の政治史を語る上で当然欠くことのできない軍部や近衛らの政治家、そして昭和天皇*1の動向や言動にもちろん多くを割いた一方、新聞をはじめとするマスコミの動向にも注意を払っています。これは文藝春秋の編集長であった彼自身の問題意識ということもあるのでしょうが、彼が5つの教訓の第1で述べている通り、国民的熱狂を作り出し、そしてそれを煽っていくことがいかに危険であるか、それをよりリアルに理解することができた、いや、否応なくそうさせられたなぁというのが、私の一番の感想でした。少し前に出たこの記事の、「ナショナリズムの隆盛が目立つ」という言葉がなぜ「厳しい評価」の「理由」になるのか、これも否応なく『昭和史』に突きつけられてしまった気がします。
報道の自由:日本に厳しい評価 国境なき記者団がランク
【パリ福井聡】国境なき記者団(本部・パリ)は24日、世界168カ国の「06年報道の自由度ランキング」を発表した。
それによると、最高位はフィンランド▽アイルランド▽アイスランド▽オランダの4カ国。最低は北朝鮮▽トルクメニスタン▽エリトリアの3カ国だった。日本は「ナショナリズムの隆盛が目立つ」との理由で前年より14位下がって51位と厳しい評価となった。
米国は「テロとの戦いを巡りブッシュ政権と司法、メディアの関係が悪化した」として53位に、前年首位だったデンマークはムハンマドの風刺画掲載への脅迫などで19位に、フランスも治安を巡る政府とメディアの対立から35位に、それぞれ後退した。(10月24日、毎日新聞)
あともう一つ付け加えるならば、戦前の昭和史を語る上で無論「教訓」という言葉とは無縁ではいられないわけで須賀、このような悲惨な戦争に長期にわたって手を染めてしまった原因*2や、どこかで引き返すターニングポイントの有無といった論点以上に、独ソ不可侵条約のところで出てくる、このくだりが印象的でした。
…つまり時代の渦中にいる人間というものは、まったく時代の実像を理解できないのではないか、という嘆きでもあるのです。(中略)これは何もあの時代にかぎらないのかもしれません。今だってそうなんじゃないか。なるほど、新聞やテレビや雑誌など、豊富すぎる情報で、われわれは日本の現在をきちんと把握している、国家が今や猛烈な力とスピードによって変わろうとしていることをリアルタイムで実感している、とそう思っている。でも、それはそうと思い込んでいるだけで、実は何もわかっていない、何も見えていないのではないですか。(中略)ですから、歴史を学んで歴史を見る眼を磨け、というわけなんですな…
確かに彼の言うとおり、「それにしても何とアホな戦争をしたものか」というのが戦後に生きるわれわれの実感としては多くを占めるものだと思いますし、私もそれに異議はありません。でも、それって後知恵でしかないんですよね。私が戦前の昭和史を批判してみたところで、それとさして変わらないような事態が現に今起こっていて、ただそれに私は気づいていないだけなのかもしれない… 先ほどの脚注で挙げた「状況分析力の問題」なんてまさにそれです。今正直書きながら話の落としどころに苦慮しているので須賀(藁)、「歴史を学んで歴史を見る眼を磨」くとはそもそもどういうことか、さらに歴史を学びながら考えていければと思いますw