かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『日本共産党』(中北浩爾)、『日本共産党の研究』(立花隆)

【目次】

 

100年史を簡明に紹介

非合法な状態だった戦前から国政政党化した現在まで、日本共産党の100年の歴史を説明する本です。

地下活動を通じて特高と闘うも壊滅した戦前、戦後の間もない時期の武装闘争を放棄し、ソ中共産党と決別して平和革命路線に転じてからの選挙・国会戦略などを、まとまりよく紹介してくれています。序盤と後半で議論の趣きが大きく異なるさまに、100年という時間、そして時代の変化を感じさせられます。

一つ興味を持ったのは、自社さ連立によって社会党が右傾化した間隙を突くように共産党が「自衛中立」から「非武装中立」に転じ、唯一の革新政党として支持を集めた際の共産党側のロジックがどんなものだったのか、という点です。現在からはイメージしづらい部分もありま須賀、共産党は革命を目指す以上、本来は「戦ってナンボ」であり、そこから「平和の党」に急転回することにどんな理由付けをしたのか、旧来の(コアな)支持層がそれをどう受け止めたのか、そのあたりはあまり説明がなかったかと思いますので、どんなものなのか気になりました。

戦前共産党を鮮やかに描く

こちらはその100年間の真ん中頃に、立花隆(とそのチーム)の文藝春秋連載を書籍化したものです。

先述の特高との闘いや地下活動の様子、コミンテルン指令に翻弄された幹部の困惑、スパイに党の主要組織をほぼ掌握されていた時代、大物幹部の転向、そして執筆当時に党トップだった宮本顕治が関わったとされるリンチ事件…こうした戦前の日本共産党の歴史を、精力的な取材を通じて克明に描いています。

その時点で(今もですけど)議会政党でありながら民主集中制を維持していたり、リンチ事件について頑なに認めていなかったり、連載中からあることないことで激しい非難を浴びせてきたり…といったあたりに対する筆者の批判も長々展開されており、それはそれで半世紀前の共産党をめぐる歴史の一幕ということなのでしょう。一方の本筋の部分は、本当にスパイ小説を読んでいるかのような秀逸なノンフィクション作品になっています。

変わったこと、変わらないこと

つい最近も、党首公選制を訴えた党員が分派活動とみなされて除名される出来事がありました。100年で大きく変わった部分もあるが、変わらない部分もある。後者の典型がこの民主集中制なわけで須賀、これまでいくつもの大きな変化を乗り越え、あるいは選択してきた日本共産党にとって、そこまで受け入れ難い方針転換なのか。これらの本とともに長い歴史を旅してきた私には、そうは感じられませんでした。