かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『中核vs革マル』(立花隆)

【目次】

 

 

想像を絶する暴力の連鎖

『中核vs革マル』は、立花隆氏が1970年代に発生した極左暴力集団中核派」と「革命的共産主義者同盟」(通称・革マル派)の歴史を追い、その背景や思想、行動について考察した著作です。

立花氏は、本書で中核派革マル派が抱えていたイデオロギーの違いを詳しく分析し、それが彼らの暴力行為やテロ行為にどのような影響を与えたかを明らかにしています。また、両グループの歴史を追いながら、当時の日本社会や政治情勢、学生運動の背景を詳しく描写し、読者にリアルな状況を伝えています。

立花氏は、本書の中で自身が当時、中核派革マル派接触した経験を詳しく語り、彼らの思考や行動について理解を深めることを読者に訴えています。また、彼らのイデオロギーが根底にある思想や価値観を解説しつつ、それが現代の社会や政治にどのような影響を与えているかにも触れています。

本書は、極左テロに対する理解を深める上で貴重な一冊であり、日本の戦後史に興味を持つ人にもオススメです。立花氏の鋭い洞察力と平易な文体により、読者は当時の状況をリアルに感じ取りながら、テロ行為の根底にある思想や社会情勢について理解を深めることができます。

上記は、ChatGPTに書いてもらった本書の「書評」です。明らかな事実誤認を含むものもあったので、数回頼んだ中で一番マトモなものを選びました(別バージョンでは中核派国家主義者とされていたり、殺害された書記長が全く別の名前になっていたりしました)。

自分の両親世代の人たちがこんな時代に学生生活を送っていたことに、率直に言って驚きました。路上や隠れ家を急襲して(無関係な家族の前でも)鉄パイプやバールで殴り殺す、電車の車両の窓やらを叩き割って相手方が集団で移動中の車内に雪崩れ込んで大乱闘する、大学キャンパス内や街中で「市街戦」を展開する、記者会見や機関紙で罵詈雑言を交わし合う…隔世の感と言ってしまえばそれまでなのでしょうが、感覚的に、自分の学生時代やそれ以降の生活の延長線上には想像しづらい世界でした。

公安当局との「三国志

ChatGPTが言うように、著者は両派への取材と詳細な機関紙の読み解きによって、この凄惨な暴力の連鎖を描き上げています。その上でさらに気になったのは以下の二つの視点でした。

青写真的には言及があるものの、第三のアクターとしての公安当局の意図や行動はより具体的に把握して論じた方がよいと思いました。双方ともに「相手は国家権力と(態様や態度はともかく)結託して我々を攻撃してきている。だからこれは内ゲバではなく、反革命との闘いなのだ!」と信じており、現に両派の乱闘や襲撃があった際にどちらがどの程度逮捕や捜索を受けたかについて、恣意的だとの見方はあったようです。平たく言うと、公安当局側が「漁夫の利」を狙っていたとの指摘もあります。とすると、ことの全体像を浮き彫りにする上で、公安当局側の動向をより深く知ることは不可欠です。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

ではまさにその点が詳述されていま須賀、同書と異なり、リアルタイムで同様の情報を得る制約は大きかったのでしょう。

同時代人の受け止めは?

二つ目は、先述した感想とも重なりま須賀、当事者以外の同時代の人々がこの「戦争」をどう捉えていたのか、です。公衆の面前で大乱闘を繰り広げていたりもするわけで、人違いでの襲撃が多発したことも含めて、どのように見られていたのか知りたいと思いました(現実問題としては、この本はほぼリアルタイムで書かれているのでその辺は自明なものとして言及されなかったのでしょう)。

実際に大学キャンパス内で、数百人の目の前で一人が襲われた際、数人が止めに入ったもののそこからけが人も出た、という記述もありました。自分がこの時代に大学生だったら、こうした新左翼やその抗争にどんな態度を取っただろうか、つい想像してしまいます。