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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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歴史や理論から見通す労働法の全体像/『労働法入門』(水町勇一郎)

 

労働法入門 新版 (岩波新書)

労働法入門 新版 (岩波新書)

 

労働法と呼ばれる法律群の全体像や見通しについて紹介する本です。

いわゆる「働き方改革関連法」といった最新動向に触れつつも、法解釈などに関する個別の論点よりは、歴史的・理論的背景や法の構造、他国と比較した日本法の特徴などについて紙幅を割いています。例えば、日本の企業は共同体的意識が強いこともあり、一度雇った労働者を解雇しにくい分、採用や人事では使用者側の裁量が大きい…などです。労働法制の全体像を把握するには非常に適した本だと思います。

加えて著者は、今後の労働法のあり方についても提言しています。働き方が多様化する一方、グローバルな企業間競争の中でも労働者の立場を守るため、個人と国家だけでない、集団の役割が重要になるというのです。

これまでの労働法の世界では、個人と国家の間にある集団の最たるものは労働組合である、と言って間違いないでしょう。しかし著者の言う「集団」は労働組合に限らず、専門的知見を持って労使をサポートとする社会ネットワークをも含みます。様々な働き方や立場の労働者がますます増える中では、企業別や産業別というような枠組みや、「ある立場の組織としてあるべきスタンス」に捉われないあり方求められるということなのでしょう。それは、既存の労働組合であっても、新しい社会ネットワークであってもよいのだと思いま須賀、いずれにせよ、そうした発想を取り入れていくことが重要なのだと思います。

それこそ歴史を紐解けば、個々の労働者は使用者よりも弱い立場にある、というのが労働法の大前提です。労働者の働き方や価値観が多様化しているとしても、それをうまく乗り越えて、「団結」と言わずとも「連携」していくことが、よりよい労働環境を保っていくためのスタートラインなのだろうと感じました。

 

 

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