- 作者: 呉座勇一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/10/19
- メディア: 新書
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応仁の乱を大真面目に解説していながら、ベストセラーになったと話題になった本です。登場人物の人間関係はかなり錯綜しているんで須賀、彼らを内在的に理解しようとする記述が面白さを生んでいるのだと思います。
例えば畠山義就がどちら側かはむしろどうでもよくて、その時代や各登場人物の価値観とか、彼らの人間関係の機微といったものによって大乱の過程が説明されている点が、読者にストーリーとしての満足感を与えるのかなと感じました。
著者は第一次世界大戦との対比についても述べているので須賀、その点も興味深かったです。両陣営とも大戦を予想していなかった、軍事技術的な理由からこちらも予想に反して長期戦となった、そのためか補給の差が勝敗と一致した、というあたりは共通しているんですよね。そう考えると、この本が片方の軸足を置いた大和というのは第一次世界大戦におけるバルカン半島と似た役割を果たしたとも言えるわけで、そこが筋を追っていて純粋に面白い話としてのこの本の価値を高めているような気もします。
小難しい本ではないです。日本史の勉強であるとか人名を覚えるとかという意識ではなく、純粋にお話として楽しむのがよいのではないかと私は思います。