- 作者: 山口敬之
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2016/06/09
- メディア: 単行本
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一言で言ってしまうと、国家観がはっきりしていれば、その中身は何でもいいのか?ということです。著者は先述したような論点の是非については全く議論せず、むしろ「リベラル派が党派的に反発しているだけだ」と言いたげな態度です。中身は問わないが、本気度がある。それで十分なら、ヒトラーだって著者のお眼鏡にかなうということなのでしょうか。
この本では、安倍首相や麻生副総理が実は非常に魅力的な人物である、ということが頻りに描かれていますが、その点について(推測も込めて)否定するものではありません*1。ただ、田中角栄の名を出すまでもなく、有力政治家ともなるような人間は人間的魅力にも恵まれているケースが多く、多分この2人が特別だ、という印象は持たない方がいいだろうと思います。加えて著者は「アベ政治を許さない」と連呼する面々に、私の言葉で言わせてもらえば「アベ本人やアベ政治をもっと内在的に理解せよ」と促すので須賀、逆に言えば、政策の中身を論じずに国家観と覚悟の有無だけで総理の器と称揚するのはジャーナリストによる内在的理解であるとは私はみなしません。すでに亡くなっている人を持ち出すのはやや格好悪いですけど、これを筑紫哲也が読んだら「君は安倍と麻生の使い走りじゃないか」と言うのが目に見えている気がします。
大した特ダネを書けなかった記者の僻みかもしれませんが、こうなりたいとは思わないです。