文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
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文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
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この本で著者は、考古学はもちろん、生物学や言語学、分子生物学といった幅広い学問領域を行き来しながら分析・立論を進め、その違いが人間ではなく、環境の違いによるものであることを示していきます。具体的には、ユーラシア大陸(特にメソポタミア)には栽培化しやすい植物や家畜化しやすい動物が多く、食料生産が始まることで人口増とのスパイラルが起こったことや、東西方向に長いユーラシア大陸の方が同緯度(似た気候)沿いに技術や動植物が広がりやすかったこと、そもそも大きい大陸の方が技術革新が生まれやすかった(広がりやすかった)ことなどを挙げて、技術が進歩し、多くの病原菌への耐性がある文化が育つ要因は、南米よりユーラシアの方が大きかったと結論づけています。
かいつまんでこれだけ言われてもさもありなんという感じかもしれませんが、この本のすごいところはそれを広大な視野で、かつ具体的に論じていることだと思います。往々にしてスケールの大きな話は抽象的・観念的になり、具体的な議論は(射程は長くても)それ自体は小さな話に終わってしまいがちであるのに対して、この本ではそれらを両取りしてしまったかのようです。ただ著者も認めているように、ではなぜ山田長政ではなく、鄭和でもなくピサロだったのかという疑問に対しては、まだまだ深堀する余地があったように思います。
この本は「ゼロ年代の50冊」の第1位に選ばれるなど当時の世界的ベストセラーで、2016年の秋に読んでしれっとレビューすべき本ではなかったかもしれません(笑) 事実、分子生物学の分野ではこの本の記述を覆す成果がすでに得られているようです(現生人類にネアンデルタール人の遺伝的影響が刻まれている、など)。まあそれでも、13000年の人類史を語った本としての価値は当面色褪せることはないと思いますし、ますますはびこるようになった人種主義の足下をしっかりとさらっていくという意味においては、残念なことに「今こそ読むべき本」になっているのかもしれません。