【目次】
「弥生人」は「縄文人」の親戚だった
古代DNAから人類の起源を探る試みについて、2021年までの成果をまとめた本です。近年急速に発展している研究領域でもあり、人類の歴史をさらに知るための新たな有力アプローチとして、個人的にも関心を持っています。
canarykanariiya.hatenadiary.jp
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別著も複数読みましたが、今回の一冊は全世界的な視野でよくまとまっていると感じます。
やはり文献や出土品が残っていない時代の人類の行動に示唆を与えてくれる点が非常に興味深く、もはや有名な話になりつつありま須賀、アジア系含む少なからずの現代人はネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいることが明らかになっており、新型コロナ感染を重症化させる方向に働くウイルスが、ネアンデルタール人由来である可能性も指摘されているそうです。
また、日本人に関して言えば、縄文人と弥生人の「二重起源説」が有名で須賀、
- アフリカから最初に拡散してきたホモ・サピエンスが、東南アジアから北上した際、沿岸部に住んでいた人が(日本で言うところの)「縄文人」の母体となった
- これまで「弥生人」と呼ばれた人たちも、(日本で言うところの)「縄文人」と同じ系統の集団が中国大陸の農耕民と混合したものであり、つまりはそもそも一定の近縁性のある人たちだった
- 弥生中期以降にも多くの渡来があった
- アイヌの人たちは沿海州との遺伝的交流があり、「縄文人の末裔」とは言えない
・・・といったシナリオが浮かび上がってきています。
人類史の複雑さを暴く
こうした研究成果が人類の交流の歴史の複雑さを解明していってくれることは、時に「自民族の優秀性」やそれを下敷きにした排他性といった言説が広まりがちな現代において、非常に意義深いことだと思います。また、「集団同士の遺伝的な差よりも、同じ集団間の個人差の方がはるかに大きい」との指摘も重要でしょう。
人間にとって遺伝子やそれによって発現する形質が全てではないのはもちろんで須賀、科学的な知見を押さえておくことは、(特定の人や集団を貶める)それっぽいデマが拡散するのを防ぐのにも大切なことです。
いずれにせよ、この分野に「世界史研究の最先端」の一つがあるのは間違いありませんので、興味がある方にはおすすめです。