かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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今だからこそ「イスラーム≠イスラム国」を確認したい

<「後藤さん殺害」>日本人人質事件は最悪の展開に
【カイロ秋山信一、アンマン田中龍士】中東のイスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)はシリア時間1月31日午後10時(日本時間2月1日午前5時)ごろ、人質として拘束していたジャーナリスト、後藤健二さん(47)を殺害したとする映像をインターネット上で公開した。政府は1日朝に関係閣僚会議を開き、警察当局者が「(動画は後藤さん)本人である信ぴょう性が高い」と説明した。ISは千葉市出身の湯川遥菜さん(42)も「殺害した」としており、日本人を狙った人質事件は最悪の展開となった。
ISはヨルダンで収監されている前身組織メンバー、サジダ・リシャウィ死刑囚をイラク時間29日の日没(日本時間同日深夜〜30日未明)までに釈放しなければ、後藤さんと、別の人質のヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉を殺害すると脅迫していた。だが、ヨルダン政府はこれに応じなかった。
「日本政府へのメッセージ」と題する映像は約1分間で、IS広報部門のロゴマーク入り。黒ずくめで覆面姿の男が、オレンジ色の服を着てひざまずく後藤さんとみられる男性の脇で「アベ(安倍晋三首相)。勝てもしない(ISとの)戦いに参加するという無謀な決断のせいで、ケンジ(後藤さん)を殺すことになった」と主張、今後も日本人を標的にすると予告した。その後、地面に横たわった遺体が映し出された。声明は、カサスベ中尉の安否には触れなかった。
イラク北部モスルを拠点にするISのラジオ局は1日、「期限が過ぎたため、イスラム国が2人目の日本人の人質を殺害した。日本が十字軍連合(対IS有志国連合)に参加し、イスラム教徒に敵対したのが理由だ」と報じた。
一方、ヨルダンのモマニ・メディア担当相は1日、後藤さんの「殺害」映像を受け、「日本人人質の殺害を強く非難する」との声明を発表した。「ヨルダンは人質の解放に努力を惜しまなかった」とし、「(ISが)人質解放に向けた関係当局のあらゆる試みを拒絶した」とIS側を非難した。ロイター通信によるとモマニ氏は、ISがカサスベ中尉を解放すれば「リシャウィ死刑囚を手渡す用意は引き続きある」と述べた。
湯川さんは昨年7月にシリア入りした後、8月にISに拘束された。後藤さんは旧知の湯川さんの救出や取材の目的で10月にシリア入りし、「IS支配地域に向かう」と友人に伝えた後、消息を絶っていた。
◇「イスラム国」声明全文
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)が新たに公開した声明の全文は以下の通り。
     □
日本政府へ。お前たちは、悪魔の連合(有志国連合)の愚かな同盟諸国と同様、今こそ理解しなければならない。我々はアラー(神)の恵みによって権威と力を備えたイスラム教のカリフ国家であって、我々全軍がお前たちの血に飢えているのだ。
アベ(安倍晋三首相)。勝てもしない戦いに参加するというお前の無謀な決断のせいで、このナイフはケンジ(後藤健二さん)を殺すだけでなく、これからもどこであろうとお前の国民を見つければ皆殺しにする。さあ、日本の悪夢を始めよう。
【ことば】「イスラム国」
イラクとシリアにまたがる地域で急速に勢力を拡大したイスラムスンニ派の過激派組織。イスラム法に基づく新国家建設を目指す。イラク人のアブバクル・バグダディ指導者が率いる。前身は2004年にザルカウィ容疑者(06年に米軍が殺害)が創始した「イラクの聖戦アルカイダ組織」で13年にシリア内戦に本格参戦した。国際テロ組織アルカイダのシリアからの撤退命令を無視したため14年2月に関係を断絶。同年6月に「イスラム国」に改称し、国家樹立を宣言した。石油売却などによる豊富な資金と巧みな宣伝戦略で勧誘し、外国からも多数の戦闘員が参加している。
(2月1日、毎日新聞)

「有言実行」を重ねてきた(それだけではないが)彼らだけに予期された事態ではありましたが、最悪の結果となってしまいました。残念です。
飛び込んできたニュースを紙面に割りつけて印刷所に回す、という新聞社の整理部の仕事から言えば、「モスルの日没」が日本時間で午後11時半だったりと、シビれる展開が続きました。事態が急変すると原稿・写真から見出し・レイアウトまで差し替えなければならなくなるので大わらわなんですね。私はそこまで大変な目には遭わなかったですけれども、この部署のそういう大変さかつ醍醐味は感じられました。
…という私の仕事の話なんかは半ばどうでもよくてですね、今は本当に一つだけ、言いたいことがあるんです。世界に13億人いるとも言われるムスリムたちを、十把一絡げにテロリスト扱いしないでほしい。私がイスラーム圏とされる国々に滞在していたのも高々3週間ほどでしかありませんが、その間でさえ、その地に住む人たちの温かさに触れることができました。今だって連絡を取り合う人もいます。当たり前で須賀、彼らのイスラームの教えに対するスタンス(コミット度合い)はそれぞれです。自宅にお邪魔したら平気で酒が出てくるわけですから(笑)、ムスリムは皆敬虔であるかと問われれば「人それぞれだ」と答えることになるでしょうし、皆狂信的かと問われても答えは同じでしょう。そもそも残念ながら、卑劣なテロリストや人殺しは宗教を問わず存在するのが現状です。
「これからもどこであろうとお前の国民を見つければ皆殺しにする。さあ、日本の悪夢を始めよう」。今回のような在外日本人を狙った人質事件のみならず、フランスでの新聞社襲撃のような手口すら連想させるような脅し文句。当然そんなことをさせてはいけない。テロに屈せず社会を守り、そこに住む人々の安全を守るのが日本政府の使命ではありま須賀、どうか社会がますます不寛容の度を増さないように、中東出身の人たちやイスラームの信仰を持つ人たちがそのことを理由に疑われ、差別され、不利益な扱いを受けることがないように、私は願っています。