かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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短信2/プーチンはアサドの「太陽」となるか?

そのシリア情勢についても少し。

<シリア>化学兵器を国際監視下に 露外相が要請
【モスクワ田中洋之】ロシアのラブロフ外相は9日、記者会見し、シリアのアサド政権に対し同国が保有する化学兵器を国際監視下に置くよう求めた。ケリー米国務長官が同日、シリアが来週までに化学兵器を放棄すれば攻撃を回避すると述べたことを受けたもので、軍事介入に反対するロシアがアサド政権の説得工作に乗り出した形だ。シリアのムアレム外相は提案を歓迎する立場を示した。ただ、アサド政権は化学兵器保有を公式に認めておらず、実際に要請を受け入れるかどうかは不明だ。
ラブロフ外相はシリアに対し、化学兵器の保管場所を国際監視下に置く▽化学兵器を破棄する▽化学兵器禁止条約に加盟する−−ことを要請。これらの提案はモスクワで同日会談したシリアのムアレム外相に伝達された。
ラブロフ外相は、「シリアの化学兵器を国際監視下に置くことで(米国の)攻撃を回避できるのであれば、ロシアはシリアとともに直ちにこの作業に着手する」と表明した。
ケリー長官は同日、訪問先のロンドンでヘイグ英外相と会談した後、記者会見し、米国によるシリア攻撃を回避するためには、アサド大統領が来週までに化学兵器を国際社会に引き渡す必要があるとの考えを示した。一方、長官は、「アサド(大統領)はそうしないだろう」と述べ、攻撃の必要性を訴えてもいた。
(9月9日、毎日新聞)

アサド政権が化学兵器を用いている。これはレッドラインを越えた、許容できない行為だ。安保理決議がなくても、国連の調査を待たずとも攻撃を実施し、使用をやめさせる―これが、アメリカ・オバマ政権の立場です。しかし、イギリスが議会の賛同を得られずに不参加。オバマ政権も本来法的には必要ない議会の承認を得ると表明し、今は見通しの厳しい中、その取り付けの佳境であるとされています。
もしアメリカの主張が事実であるとして、自国民に残虐兵器を用いて苦しめる政権を、その国の自衛に基礎付けずに攻撃してやめさせることは許されるのか。私の書棚で眠る『国際法』や、『国際政治学』などによると、そうした議論は「保護する責任」論として、昨今*1浮上しているものです。まさにNATOによるユーゴ空爆安保理決議による明示的容認なく行われ、それに伴って「人権」と「平和(武力不行使)」という二つの原理をどう調整するかについて様々な見解が出されてきたようで須賀、近年国連の場では、「保護する責任」は国連憲章の範囲内で、すなわち安保理の容認の上で行使されるべきだ、という見解がまとめられつつあるようです。要するに、たとえアメリカがどんな明白な証拠を持っていたとしても、安保理決議も、国連の調査もまとまらないまま武力行使に走るというのは国連体制下では問題が大きいと言わざるを得ません。言うまでもなく議会の承認は内部の話ですから、北朝鮮が同じ手続きでミサイル飛ばしてきたら、納得できますか?(笑)
さて、このテーマを今になって取り上げたのは、このロシアの動きに注目したからです。実際にこんなことできるのか、という疑問があるのも承知していま須賀、アメリカとロシアが「北風」と「太陽」の、言い換えれば「怖い警官」と「優しい警官」の役割を結果としてでも演じることに、私は落しどころを探る光明を見出したい。オバマ政権としては、攻撃への国際的理解がなかなか得られないどころか、自国の議会が何と言うかも覚束ない…という状況下で、実は抜けるかどうかちょっと怪しいし、抜いたとしても自分の立場を悪くしかねない「武力行使」という伝家の宝刀を、結果として抜く必要がなくなるならそれに越したことはないはずです。それに、もしそうなれば「オレが脅かしてやったからだ」と主張して体面を保つこともできる。このへんから事態が開いていくことに期待をしたいところで須賀、そもそも、シリアのどこをどう攻撃すれば、どんな理由で化学兵器使用を止めることができるのか―そこが要は出口戦略なんだと思うので須賀―というあたりがイマイチ腑に落ちないというか、理解ができていない私であります。

*1:と言っても15年くらいはあります