- 作者: 池内恵
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/01/20
- メディア: 単行本
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グローバル化やIT化も相まってジハード論の思想や運動が拡大し、アルカイダ(など)を中心とする諸団体の緩やかな紐帯*2や、ごく個人的かつ一方的なコミットメントの表明*3を特徴とする「グローバル・ジハード運動」が成立したこと(1)。アラブの春で中東各国の政権が動揺して地方統治の弛緩が進み、また相次ぐ中東政策の失敗(と言っていいと思いますけど)で米国のプレゼンスが低下していること(2)。こうした二つの条件が重なることで、イラクとシリアのそれぞれ周縁部に、国境をまたぐ形で「イスラム国」なる集団が支配する領域が生まれた。その点が、この現象の「衝撃」であると著者は論じます。
こうした筋書きに沿って、2014年末までの彼らの来し方とその要因を平易に解説しており、オススメできる一冊です。第1刷が出たのがまさに「イスラム国」がビデオで日本人拘束の事実を突き付けた1月20日とあって、その事件の顛末や分析については触れられていませんが、こういうショッキングな事件こそ現象面以上にその背景を知ることが有益だと思いますし、昨今言われるようになったように、前者にのみ注目すること自体が彼らの思うつぼでもあるでしょう*4。さらには、その都度の展開については著者が運営するブログ中東・イスラーム学の風姿花伝でも解説されていますので、そちらでフォローできるかと思います。関心のある人は是非、と言える本ではないでしょうか。