一報で投稿しましたように、北朝鮮の故・金正日総書記の長男の金正男氏がマレーシアで亡くなりました。現時点で断定すべき証拠があるわけではないようで須賀、ほぼ間違いなく、異母弟の金正恩委員長の意向に基づく暗殺でしょう。
金正恩氏としては、殺す動機は十分あったと思います。帰国命令に応じなかったなどとの報道もあるようで須賀、そもそも「王位」を狙いうる立場の人間を(本人が狙っているか否かに関わらず)葬り去るというのは歴史の常ですし、この兄弟の場合には、具体的な「リスク」もありました。彼らの叔父でナンバー2とみなされていた張成沢が処刑されたのは衝撃的でしたが、張成沢・金敬姫(金正日総書記のいもうと)夫婦が実子のように可愛がったのが金正男氏だったとされます。そしてまた、中国の改革開放的な路線を模索すべきと考えていた点も共通していたそうです。
そうなれば異母兄は危険な存在になります。逆に彼が拠点を持っていた中国も、より「穏健」で「開明的」に見える兄を北朝鮮のソフト・ランディングを為すためのカードとして暗殺から守ってきたと言われています*1。そこを殺してしまったとすれば、殺害現場となったマレーシアはもちろん、中国と北朝鮮との関係にもヒビを入れることになる。その意味では、これは「金王朝」を巡る宮廷内のゴタゴタとしてだけ捉えていてはいけない問題だと言えます。
*********
それはともかくですけど、個人的にも思うところの多い事件でありました。もう16年前だったでしょうか、「北朝鮮の王子様がディズニーランドに行くために日本に来た」というへんてこりんな事件がなければ、私はこの国にどのくらい興味を持ったかなあと思います。その後、 『父・金正日と私 金正男独占告白』(五味洋治)などを読んで、まさに私が北朝鮮に行って感じたことーへんてこりんに見える国の人たちも、案外自分と似たところもあるじゃないかーを再度思い起こさせてくれたのも彼でした。この文章は一人で酒を飲みながら書いていま須賀、そう考えると悲しいというか(表現としては確実に不穏当で須賀)感慨深いというか、ちょっと気持ちの整理がつかないです。
しかし、殺害方法は言うまでもなく、やっぱりすごい国だなあ。
*1:「中国後見による金正男・七月王政」なんてシナリオを想像していたのもそうした状況によるものです