かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『地方消滅』(増田寛也編著)

全国自治体のほぼ半分が人口減による「消滅可能性都市」だ―。夏前から波紋を広げている日本創成会議の推計やその影響、取るべき対策などについてまとめた本です。この「消滅可能性」は、2010年からの30年間に20・30代の女性人口が半分以下になることをもって定義されており、本当に2040年にゴーストタウンのようになっていることを直接予測するものではありません。その点も含めてややネーミングや推計値が独り歩きしがちな印象で、実際に面識のある「消滅可能性都市」の首長も「さすがにこんな数字になるとまでは思っていない」と漏らしていました。ただ、一読する限りにおいてこの人口動態の分析・予測というのは論理的にはできていて、生理的にあまり気分のいい話ではありませんでしたが、出生率がちょっと増えたところで上記世代の女性が減ったら生まれてくる子供の数は減るわけで、そういう大所高所に立った人口論*1の手法みたいなものは学ばせてもらいました。
ただ一つ感じたのは、もう少し東京の「求心力」が弱まる近未来を想像してもいいのではないかということです。イノベーションとまで呼ぶ必要があるのかは分かりませんが、まさに現在進行中の情報技術の発達が「東京に行かなくてもいい」働き方を生みだす機会を提供してくれているように思います。まさに「地元でだって仕事はできる」と「消滅可能性都市」にUターンしたIT関連の若者にも会いましたし、今後そういう社会通念が広がっていけば、そうした業種はもっと増えていくはずです*2。個人的には、日本にリニアが開通する頃には、(新幹線や飛行機もあるのに)そこまでして急いで全国を駆け回らなければいけない人たちの数は相当減ってしまっているのではないかと予想していまして、結果的に今進みつつあるリニア事業は究極のムダ公共事業として語り継がれるのではないかと危惧しています。話が逸れましたかねww
とはいえ、「今の東京は少子化による減を高齢者の増加で覆い隠しているような状態で、実はかなり深刻な事態が進行しつつある」など、無視できない分析の上に立った人口減社会論です。その対応策についても紙幅が割かれていま須賀、著者らも「これはしばらくの人口減の中で続けられる撤退戦だ」と認めるように、なかなか「決め球」になるような手があるわけではないというのが現状のようです。
冒頭でご紹介した首長さん。呑気なことを言っているように聞こえたかもしれませんが、少子化対策には早い時期から傾注してきた方です。それでも、雇用の場が特定分野に限られているといった条件もあり、人口流出に歯止めをかけるには至っていません。「もうこれは、自治体だけの取り組みで何とかなる問題じゃないよね」。その人のみならずよく聞かれた声で須賀、「決め球」がないからこそ、国や自治体、企業などのアクターが連携して「配球・制球よく」、つまり目標をしっかり見定めて継続して取り組んでいく必要があるということなのでしょう。

*1:そこが鼻につくというか、著者らもそう言っているとはいえ、どうしても「結婚するしないとか子供を(何人)産み育てるかなんてこっちの勝手だろ」という反感をくすぶらせながら読んでしまうわけで須賀

*2:「それができるのはそれだけのゆとりや能力のある人間だ」と言われれば、現状その側面があるとは認めま須賀